賃貸併用住宅はアパートと何が違うのか


賃貸併用住宅はマイホームを購入するというよりも、不動産投資の一種だというほうが実態に近いです。マイホームの購入も不動産投資の一種ではあるのですが、購入する物件を検討するプロセスは投資用不動産とマイホームでは全く別の観点で検討します。賃貸需要や資産性の高い立地などを考える必要がある賃貸併用住宅は、一棟アパートなどの投資用物件の検討プロセスにとても似ているのです。

ではなぜ新築も中古も選択肢が豊富にあり利回りも高いアパートではなく、わざわざ賃貸併用住宅を取得する人がいるのでしょうか。ちょうど私は賃貸併用住宅を新築して住んでいますし、一棟アパートの購入と運用を経験していますので、今回は賃貸併用住宅とアパートの両方に投資(取得)した経験から得た、両者の特徴についてお伝えしていきます。



賃貸併用住宅とアパートの比較表


賃貸併用住宅とアパートの違いは比較表で見ればすぐに分かります。下記の比較表をご覧ください。


一棟アパートのほうが利回りが高く、物件の数も豊富で新築も中古も多くの選択肢が存在しています。ただしこれらの物件で収益を得られるかどうかはまた別の話ですのが、利回りも取得までの手間も賃貸併用住宅に比べて優れていると言えるでしょう。

ただし住宅ローンを使える賃貸併用住宅は、金利が低いため銀行への支払利息が少ないですし、住宅ローン控除も使えます。また自分が住んでいる限り自宅部分は空室になりませんし、賃貸住居の修繕や住宅設備入れ替えの負担も小さいので、リスクはかなり低いです。

ここで大枠での違いから一歩踏み込んで、実際の収支がどうなるか数字で比較できるようにしたのが下記の比較表です。数値の差が分かりやすいように、高額な例ですが都内の人気駅徒歩10分以内の立地で新築した場合の数値を参考地として記載しています。


ちなみに比較しやすいように、賃貸併用住宅の自宅部分については『帰属家賃』という考え方を使っています。自宅部分を賃貸で借りたとしたら家賃が何万円必要かを想定し、その家賃額だけ住居費が浮いた=同額の家賃収入と同等の効果があった、という考え方です。ここから何が読み取れるのかをさらに見ていきましょう。

賃貸併用住宅は安全に資産形成できる


試算してみると分かるのですが、賃貸併用住宅は家賃収入が少なく利回りも低いものの、支出が少ないために最終的な収支はアパートとほとんど変わりません(「ローン完済時収支累計」の項目)。さらに賃貸併用住宅は借入金利が低いために元金の減りが早いので、資産形成のスピードはアパートよりも早く進みます(「10年後資産」や「20年後資産」の項目)。

自宅部分は住んでいる限り空室になる事がなく、修繕や設備交換の支出が少なく、賃貸住居の管理の手間も少なく、ローンの残高も早く減る。表面的に利回りが低く効率が悪そうに見える賃貸併用住宅ですが、実際の収支はアパート同等で、しかもリスクが低いのです。

アパート投資は手元に現金が貯まりやすい


一方でアパート投資は手元に現金が残ります。帰属家賃は机上の数値ですが、アパートから得る家賃収入は実際のお金として銀行口座に積み上がっていきます。その変わり支出が多いのも事実ですが、『手元にお金がある』というのは投資や資産運用において重要な意味があります。

それは手元にあるお金を再投資してさらに収益を得ることができるからです。資産運用では複利効果によって資産を雪だるま式に増やす話がよく出てきますが、この複利効果を得るには再投資が必要です。ただし再投資の繰り返しが全て上手くいくとは限らないですし、再投資によって損をしてしまえば元も子もないので、投資活動は慎重に行う必要はあります。

またアパートから得られる家賃収入は多いわけですから、運用経費を減らすことができればそれだけ収益を得るチャンスがあります。入退去に関する修繕費を安くしたり、給湯器などの住宅設備の入れ替えを安くできる業者を見つけるなど、収支改善の工夫の余地が色々とあるのもアパート投資の魅力です。ただしそれなりの努力が必要です。

投資や資産運用の初心者は賃貸併用住宅がオススメ


投資効率(利回り)で言えばアパート投資のほうが効率は良いですが、支出が少なく税制優遇のある賃貸併用住宅も実質的な収支はあまり変わりません。ただし賃貸併用住宅は自宅として使用することで住宅ローンという最強の融資を使えるので、住宅ローンの返済が終わるまで1軒しか所有することができません。賃貸経営の規模を大きくする事ができないのです。

ただし賃貸併用住宅の場合は自分が住んでいるため、絶対に全部が空室になる事がないことと、運用管理に関する支出が少ないことから、万が一のときでもローン返済不能になるような事が起きにくいです。家賃収入で住宅ローンを返済していくことで、自然に数千万円の不動産という資産ができるのですから、投資や資産運用の初心者にはとてもオススメの不動産投資の手法だと言えます。

また不動産投資でセミリタイアするんだ!と意気込んでいるような人でも、投資の初期に賃貸併用住宅の賃貸住宅を自主管理することで、経験・ノウハウを自然に身につけることができます。5棟・10室以上の事業規模で賃貸経営を実践している人はすでに不要ですが、そうでない限り賃貸併用住宅はとても有効な不動産投資の手法です。