賃貸併用住宅は危険?比較表と図解で分かる危険度と実態


賃貸併用住宅を建てたいと思って情報収集をしていると、多くのメリットを知ると同時に、デメリットやリスクについても知ることになります。その中には賃貸併用住宅に取り組むことを思いとどまらせるような記事も存在します。例えば「賃貸併用住宅は危険だ」などと書かれている記事があるのですが、これらは本当のことなのでしょうか?

今でこそ賃貸併用住宅を新築して住んでいますが、過去の私は賃貸併用住宅については否定派でした。利回りが低くて投資価値がなく、中古物件の流通量が少ないためにほとんど新築しか選択肢がないような不動産投資の手法をなぜわざわざ選ぶのか、と考えていたのです。そのため当時は賃貸併用住宅を危険だとすら考えていました。

ただ、小規模ながら不動産投資・賃貸経営の経験を積んでいくうちに、投資用物件について利回り以外の様々な価値が分かるようになり、危険だと考えていた賃貸併用住宅の価値にも気が付くようになったのです。

今回はなぜ私が賃貸併用住宅に対する考え方が大きく変わったのか、経験によって見えてきた観点をお伝えしようと思います。賃貸併用住宅と他の投資用物件とを比較することで、どんな特徴や傾向があり、本当に危険なのかどうかを確認していきましょう。



利回りが低いから危険?利回りと収支において必要な視点

賃貸併用住宅は利回りが低いから投資価値がない、さらに収益が少ないことにより経済的に破綻リスクが高く危険である、という主張をよく見かけます。不動産投資をこれから始めようとしている人や、不動産投資の経験が浅い人などの新米投資家か、不動産投資により多大な収益を得ているプロ投資家による意見が多いようです。

ではなぜこうした人たちは「賃貸併用住宅は危険&投資する価値がない」という主張をするのでしょうか?この理由は下記の4種類の投資用物件の特徴について、項目ごとに整理した比較表を見ると分かるようになります。今回はマイホームとして一戸建てを購入するという選択肢も含め、投資用物件という観点で賃貸併用住宅の特徴が分かるような比較表を作成しました。


新米不動産投資家の主張と根拠

表の中で青色は良い点・強みであり、赤色はダメな点・弱みとなっています。賃貸併用住宅を利回り(投資効率)に関連する上から3項目を見てみると、どれも薄い赤色で他の物件を購入する場合と比べて劣っていることが分かります。新米不動産投資家が賃貸併用住宅はダメだと主張する根拠はココにあります。自宅+賃貸物件なのでそれなりの規模の建物を建てるのに、家賃収入は少なく収益が少ないという点に注目しているのです。

ところが賃貸併用住宅によって、自分の居住費がなくなるという点や、運営の手間がかからない(移動費や通信費がない・少ない)、ローンの借入金利が安い、住宅ローン控除などの税制優遇がある、といった「支出が軽減される」点まで含めて考えると、賃貸併用住宅の収支は一気に改善され、メリットのとても大きい投資物件だという評価に変わるのです。

支出が減るというのは、数字の見た目以上に経済的な収支に大きなメリットをもたらします。なぜかと言うと、毎月15万円の余分な収入がある人が家賃15万円の賃貸に住んでいる場合と、余分な収入がないけれど居住費がゼロの人では、所得税の支払いがあるために余分な収入のある人のほうが実質的な収支を考えると損をしてしまうのです。支出を減らす事には税金はかからないけれど、収入を増やすと所得税が増えてしまうのです。

プロの不動産投資家の主張と根拠

一方でプロの不動産投資家はすべての項目について熟知していますが、私たちとは違う立場や前提を元に「賃貸併用住宅は意味がない」と主張しています。プロ投資家たちは賃貸経営の実績を銀行から認められているので、低い借入金利で一棟アパートや一棟マンションの購入資金を調達できますし、自分なりの運営体制を作り上げているので物件を増やしてもそれほど手間が増えず、空室を作らないノウハウもあるため破綻リスクが低いのです。

プロ投資家にとっては普通の人だとデメリットになるような点を、今まで積み上げてきた技術・経験・運営体制によってコントロールできるために、利回りの低い賃貸併用住宅ではなく一棟アパートや一棟マンションのほうがメリットが大きくなります。

そのため有名投資家が言っているのだから賃貸併用住宅は危険だ、取得する意味がない、などと思い込まないよう気を付けましょう。自分の立場や経験、手持ち資金を前提として、自分にとって一番良い選択肢は何なのかをじっくりと考えることが大切です。

「マイホーム」と「投資物件」の両方の特徴があるために危険どころか安全に

賃貸併用住宅は投資用物件とマイホームの両方の特徴を持っていますが、これによりローンを返済できなくなる経済的破綻のリスクが最も低い物件となっています。一棟アパートや一棟マンションは空室が多くなり家賃収入が減ってくると、運用経費やローン返済といった支出が多いために収支が悪化して破綻する可能性が出てきます。特に並の年収の会社員が、大型のRC造の一棟マンションを購入して空室だらけになり、住宅設備の入れ替えなどが多数発生してしまうと、とても給料で補填できるような金額ではないので一気に破綻してしまうリスクがあるのです。

一方でマイホームとして一戸建てを購入する場合、本業の年収が下がってしまったり、失業して収入がなくなってしまった場合には、住宅ローンの返済ができずに破綻する危険性があります。会社員が給料という1つの収入源のみに頼っていると、年収が減ったり失業したりした時に、十分な蓄えがないと簡単に破綻してしまうのです。


ここで賃貸併用住宅を考えてみるといかに安全かが分かります。もし賃貸部分が空室ばかりになってしまっても、元々の家賃収入がそれほど多くないために影響は小さいです。さらに住宅ローンで借入をしている場合は給料などでローン返済可能な金額しか借入できないので、もし家賃収入がゼロになってしまっても破綻するような事にはなりません。一戸建てを買って住むことに似た状況になるだけです。立地を厳選していればすぐに新しい入居者見つかるでしょう。

さらに賃貸併用住宅に住んでいれば、もし年収が下がってしまったり、失業して収入が無くなったりしても住宅ローンの返済に困ることはありません。基本的に家賃収入で住宅ローンを返済していくので、もしすぐに新しい仕事が見つからなくても、自分の住まいには困りませんから、それほどお金がなくても生活していくことができます。あわてて給料の低い仕事に就かなくてもいいので、じっくりと新しい仕事を探したり、もし希望するなら起業したりも十分に可能です。

賃貸併用住宅の強みを生かすための条件

これまで見てきたように、賃貸併用住宅は利回りが低くても支出が少なくなるおかげで実質的な収支はかなり良くなることが分かります。ただしこれは「住宅ローン」を使うことが前提となっています。もしアパートローンで賃貸併用住宅を建ててしまうと、住宅ローンの低金利という恩恵を受けられないですし、住宅ローン控除といった税制優遇の恩恵もなくなってしまいます。

住宅ローンは基本的に返済が終わらないと新しい住宅ローンの借入ができません。自分が住んでいる不動産に対して借入できるローンですから、同時に2つ以上は取得できず、一度に1つの不動産にだけ利用できる融資です。

さらに借入可能額は給料など他の収入によって上限が決まりますから、それほど大きな物件を新築したり取得したりすることもできません。そもそも住宅ローン控除の上限が年間40万円という点を考えると、最大でも8000万円前後の借入金額までに抑えないと、税制優遇のメリットも薄まってしまいます。

とはいえ、普通の会社員や個人事業主が不動産を買うことは人生で一度だけの場合が多いですし、住宅ローンの借入金額も8000万円以上の融資してもらえるような世帯のほうが少ないですから、それほど気にするような制限ではありません。住宅ローンで賃貸併用住宅を取得する、という点だけ気を付ければ多くのメリットを得ることができるのです。

特徴を生かせないと賃貸併用住宅が危険になることも

これまで見てきたように、賃貸併用住宅は「普通の人が不動産で資産形成する手法の中でも最も安全な部類である」ということが分かります。ただし賃貸経営の実績がある不動産投資家や不動産会社といったプロにとっては、住宅ローンより低い金利でアパートローンを借入できたり、間取りの工夫により利回りを最大限まで引き出したりできますから、賃貸併用住宅は中途半端で取り組む意味のない物件となってしまいます。

一方で不動産のプロでない私のような人たちにとって、数千万円という不動産資産を安全かつ簡単に構築できる賃貸併用住宅は、とても有効な資産形成の手法です。日本の税制や銀行の住宅ローンの低金利といった「ゆがみ」が生み出した、知識や経験がなくても資産形成できる不動産投資の方法なのです。特に住宅ローンを借りやすい会社員にとっては、最小限の手間で数千万円の資産を作り出せる最も簡単な方法ではないでしょうか。

ただし賃貸併用住宅の特徴を生かせず、間違ったアドバイスによって賃貸併用住宅を建ててしまうと、安全なはずの賃貸併用住宅が一気に危険な物件になることもあります。例えば賃貸需要の低い郊外で広大な土地を所有している地主さんが、ハウスメーカーの一括借り上げによる家賃保証をエサに大規模な賃貸併用住宅を建ててしまうような場合です。(これは賃貸併用住宅が危険という事ではなくてアパート建築のやり方が危険なだけですが…)

新築した頃は順調に家賃収入がありますが、何年か経つごとに徐々に保証家賃の金額を下げられ、割高な修繕費用を請求され、住宅ローンではなくアパートローンのため支払い利息の負担も大きく、手元にほとんど利益が残らないまま過ごす、という事態になりかねません。

色々と書いてきましたが、賃貸併用住宅も、一括借り上げも、不動産投資も、その仕組み自体はとても素晴らしいものです。ただし自分の頭でちゃんと考えず、他人の言いなりのままに契約してしまう行為自体が危険なのです。それぞれの仕組みについての知識や強み・弱みを把握したうえで取り組むことをオススメします。