賃貸併用住宅は不動産投資としてどうなのか?


不動産投資には数多くの投資物件の種類が存在します。

一般的な物件の種類はワンルームマンションや一棟アパート・一棟マンションですが、他にもオフィスビル、ソシアルビル、戸建て賃貸、賃貸併用住宅、駐車場、簡易宿所、トランクルームなど、本当にたくさんの投資物件があります。

その中でも賃貸併用住宅は、マイホームと一棟アパートの中間の特徴を持つため、マイホームの購入希望者が「ゼロ円マイホーム」として検討したり、不動産投資初心者がリスクの低い投資法として始めたりと、幅広い人に知られている投資物件です。

しかし他の投資物件と比べてメリットが分かりにくいため、不動産投資の手法として敬遠する人が多いのも事実ではあります。今回は他の不動産投資物件と比較しながら、賃貸併用住宅が投資物件として有効なのかを確認していきましょう。


利回りが低いからアパート投資より劣る?


賃貸併用住宅を不動産投資の対象として見ると、まずは利回りがかなり低いことに気が付きます。例えば新築の一棟アパートの利回りが8%の地域ならば、新築の賃貸併用住宅の利回りは3%前後となります。

これは自宅部分が総床面積の半分以上である事が、住宅ローンで賃貸併用住宅を建てる事ができる条件となるためです。つまり賃貸住居の床面積は建物全体の半分未満なので、アパートと比較すると利回りも半分未満となるとなるわけです。

ただし自宅部分に住む事で住居費の支払いはなくなるので、もし賃貸として住んでいたら必要な支払家賃が浮く分だけ、同等の家賃収入があると見なすことはできます。いわゆる「帰属家賃」という考えです。

ただし帰属家賃を含めたとしても、上記の例だと賃貸併用住宅利回りは6~7%が上限です。一棟アパートの利回り8%と比べると利回りが低いのはハッキリしています。

収入ではなく「収支」で考えると見えてくること


賃貸併用住宅の利回りが低いなら、一棟アパートのほうが良いじゃないか、と思うのが普通です。ところが収入だけではなく支出も含めた「収支」で評価すると、賃貸併用住宅の不動産投資としての価値が分かるようになります。

まず賃貸併用住宅は賃貸経営における運営経費が少ないです。単純に賃貸の部屋数が少ないため、住宅設備の修理や入れ替えなどの運営経費が少なく、清掃に関しては自宅ですから外部委託などしなくても自分で簡単にキレイ状態を維持できます。

また自宅として自分で所有する建物を利用するので、自宅の支払い家賃がなくなります。この「支出が減る」ことは意外と経済的メリットが大きく、同じ金額の収入が増える事よりも、所得税がかからない分だけ得をします。

例えば家賃10万円の賃貸住宅に住んでいるとしたら、余分な10万円の収入が増える(所得税がかかるので実際の手残りは少ない)よりも、家賃10万円の支払いがなくなるほうが得するということです。

マイホームに与えられた異常なほどのメリット


さらにマイホームだけに与えられているのが、極端に優遇された借入金利です。住宅ローンならば金利1%以下も十分に可能ですが、アパートローンは優秀な賃貸経営の実績がない限り2.5%ぐらいが借入金利の下限でしょう。5000万円・30年間のローンを比較すると、この金利差ならば返済総額は1,312万円も変わってきます。

さらに賃貸併用住宅において特筆すべきは、住宅ローン控除を中心とした、マイホーム取得者向けの優遇税制を利用できることです。10年間で最大400万円(条件を満たせば最大500万円)の住宅ローン控除に加え、住まい給付金、自宅売却の譲渡益に対する3000万円控除などが利用できるのです。

ただし3000万円の特別控除と住宅ローン控除は併用できません。優遇税制に関してはWebサイトで十分な情報収集をしたり、近隣の税務署に聞いておくことをオススメします。特に賃貸併用住宅を専門的に扱う不動産会社など、プロに相談することが一番早くて確実です。

賃貸併用住宅は初心者向きの堅実な不動産投資法


これまで見てきた通り、賃貸併用住宅は利回りは低いですが、それ以上に借入金利が低かったり、支出が少なかったり、優遇税制が利用できたりと、メリットの大きい不動産投資の手法です。

ただしマイホームを建てるような感覚では失敗するので、不動産投資・賃貸経営の視点で賃貸需要がある立地を見極める必要があります。といっても難しく考える必要はなく、住みたい地域が将来的に賃貸需要があるかどうかを考慮して選べば良いだけです。

また住宅ローンは自分が住む土地建物にしか使うことができないため、返済が終わるまでは一度に一軒しか取得ができません。メリットが大きくても複数の物件に投資を拡大することはできないのです。家賃収入を増やすには、一棟アパートやマンションへの投資が必要になります。

こうした特徴から、賃貸併用住宅は初めて不動産投資をする人や、5棟10室と言われる事業規模にまだ達していない不動産投資家が、堅実に資産形成しながら賃貸経営の知識・経験を得るに向いている投資法です。

賃貸併用住宅が気になる人は、ぜひ一歩進んでプロの話を聞いたり、不動産投資についての勉強を行って、どうして賃貸併用住宅が初心者向けの簡単で有利な投資法なのか、理解を深めてみてください。