賃貸併用住宅は低金利の住宅ローンを利用することで効率的に資産形成をすることができます。そのため多くの人が注目するようになったことで20坪前後の狭小地を持つ人や、土地から取得して賃貸併用住宅を建てたい人が、地価の高い立地で20坪程度の敷地を取得する、といった事例が増えてきています。
ただし同じ20坪でも、土地の形や用途地域、各種法令により賃貸併用住宅が建てられるかは変わりますし、たとえ建築可能だとしても希望するような条件の賃貸や自宅の間取りを確保できるとも限りません。どんな土地ならどんな賃貸併用住宅の建築プランができるのか。資産形成や収益はどうなのか。具体例を通していきながら見ていきましょう。
20坪の広さ
まずは基本として、20坪とはどの程度の大きさなのか確認しましょう。多くの不動産情報サイトで面積を表示する基準である㎡(平方メートル・平米)で表すと、1坪=約3.3㎡となります。つまり20坪の土地は約66㎡の広さの敷地という事になります。
20坪の土地に建てられる建物の床面積
もう一点、建ぺい率・容積率の観点から20坪の土地に建築可能な建物の広さを確認しましょう。実際に建てられる建物は多くの条件を考慮する必要がありますが、建ぺい率と容積率の観点で、最大限確保できる床面積の広さは以下となります。
建ぺい率 | 容積率 | 建築面積 | 延べ床面積 |
---|---|---|---|
40% | 80% | 約26㎡ | 約53㎡ |
50% | 100% | 約33㎡ | 約66㎡ |
60% | 150% | 約40㎡ | 約99㎡ |
60% | 160% | 約40㎡ | 約106㎡ |
60% | 200% | 約40㎡ | 約132㎡ |
80% | 200% | 約53㎡ | 約132㎡ |
80% | 240% | 約53㎡ | 約158㎡ |
80% | 300% | 約53㎡ | 約198㎡ |
20坪の土地で賃貸併用住宅を建てた時の間取り例
賃貸併用住宅は住宅ローンで賃貸住宅部分も含めて建てられる事が最大のメリットです。ただし住宅ローンで借入を行うためには自宅部分の床面積が1/2以上(50%以上)となる事が条件です。まずは自宅の床面積が希望の広さが確保できるかを確認しましょう。例えば20坪の住宅地で容積率が150%であれば延べ床面積は最大で約99㎡確保できますから、1/2以上の50㎡以上というのが目安となります。
一方、1/2未満の床面積で賃貸部分の部屋を作るので、確保できる賃貸部分の広さと間取りから考えて、希望する家賃収入を得られるかも考える必要があります。上記の続きで20坪の土地で容積率が150%ならば、賃貸部分は49㎡以下という事になります。ただし建ぺい率によりワンフロアの広さは40㎡未満となりますから、建築プランとしては以下のような間取りが考えられます。
※補足:建築面積(建ぺい率に影響)、延べ床面積(容積率に影響・壁芯面積)、内法面積(実際に利用可能な面積)の違いがある点はご注意ください。これから記載する床面積は壁芯面積となります。また建ぺい率や容積率以外にも、斜線制限や日影規制、高度地区といった制限により、容積率で計算された延べ床面積よりも少ない面積になったり、天井の一部が斜めになったりすることがあります。
1階に賃貸2戸、2階・3階が自宅の賃貸併用住宅
1階 賃貸/ワンルーム 16㎡×2戸(できればロフト8㎡付き)
2階 自宅/階段+水回り+LDK 36㎡
3階 自宅/階段+洋室 23㎡
20坪の整形地でギリギリまで床面積が確保できた場合の建築プラン例です。16㎡のワンルームでは賃貸物件として競争力が弱いので、できればロフトを最大限付けた状態にしたいです。ロフトは床面積の半分の広さまでなら床面積に算入されませんから、16㎡なら最大8㎡のロフトが設置可能です。ただしロフトは建物の高さが必要になりますから、賃貸部屋の天井を高くしたために、3階の自宅部分の天井の多くが斜めになってしまうなどの影響があります。
1階に賃貸1戸+ロフト、2階が自宅+ロフトの賃貸併用住宅
1階 賃貸/1LDK33㎡+ロフト16㎡
2階 自宅/1LDK36㎡+ロフト18㎡
受け取れる家賃収入が減ってしまいますが、人気の1LDKの間取りで、さらに大型ロフトと吹き抜け空間による3.75mの天井高を確保した賃貸と自宅の建築プランです。賃貸物件として競争力があるので空室リスクも小さく安定した賃貸経営ができます。また2階建てになるので3階建てに比べて建築費が安くなります。ただし実質的に4階建てに近い形になるため、斜線制限などの規制により、自宅の天井が一部斜めになってしまう箇所があると思います。
なお、上記の例で新築ワンルームの家賃が8万円(ロフト付きで9万円弱)の地域ならば、1LDK+ロフトの家賃はだいたい14万円ほどになります。ワンルーム2戸のほうが月間の家賃収入は多くなりますが、競争力の弱い部屋のため空室期間が長くなったり、古くなると家賃の下落が激しかったりするリスクがあります。
延べ床面積が20坪の賃貸併用住宅
20坪というやや狭い敷地で賃貸併用住宅を検討する場合、ほとんどは都市部で建ぺい率60%以上・容積率150%以上になりますから、土地が20坪あれば延べ床面積はだいたい100㎡以上確保できる計算です。ところがこれよりも小さく、延べ床面積で20坪しか取れない狭小地も存在します。
この場合、2階建てで延べ床面積20坪なのか、3階建てでやっと20坪確保できるのかで話は大きく変わってきます。
まず3階建ての場合は賃貸併用住宅は収益性が低く、自宅部分も狭い建物しかできないため、検討に値しません。3階建てで延べ床面積20坪=66㎡という事は、1階広さ26㎡・2階広さ26㎡・3階広さ14㎡で合計66㎡、という各階の構成になります。内階段で1階の賃貸へ23㎡程度の1Kしかできず、自宅は階段で削られ実質使える床面積は2階20㎡・3階11㎡程度になり、そもそも住宅ローンの借入ができない可能性が高いです。3階建てのためロフト増設も難しいです。
一方で2階建てで延べ床面積20坪ならば、ロフトを活用することで現実的な間取りができます。敷地18坪(約59㎡)の建ぺい率・容積率が60%・160%の土地ならば、延べ床面積でワンフロア33㎡が確保できます。1階・2階ともに最大限ロフトを設置すれば、内階段の面積を考慮すると下記のような間取りになります。
延べ床面積20坪の賃貸併用住宅
1階 賃貸/1LDK(1DK)30㎡+ロフト15㎡
2階 自宅/1LDK33㎡+ロフト17㎡
自宅部分の床面積が狭い(50㎡以下)ので住宅ローンの借入ができるか次第ですが、実際にこれとほぼ同じプランで賃貸併用住宅を建てた夫婦が実在しています。この場合も吹き抜けと高い天井による広い空間という魅力があるため、空室リスクが低く安定した家賃収入を得られると思います。
結論:20坪でも賃貸併用住宅は可能
以上で見てきた通り、20坪という狭小地でも賃貸併用住宅を建てることは可能です。さらに敷地面積20坪を切る、延べ床面積で20坪という場合でも賃貸併用住宅はギリギリ成立します。ただし狭小地の場合は自宅部分の床面積が狭くなりがちで、住宅ローンの借入のハードルが多少上がりますが、建築プラン次第でそれなりに高い収益や安定した家賃収入が見込めます。
ただ今回は細かく検討しませんでしたが、同じ20坪の土地でも旗竿地のような変形地では賃貸併用住宅は難しいです。建築面積がかなり小さくなりますし、玄関扉が最低でも2つ以上になりますから、まともな収益の得られる建築プランができないと思います。ただしこれも上手く条件がクリアできれば成立するかもしれないので、諦めずにまずはプロに相談してみることをオススメします。