マイホームが欲しいなあ、と思ってマンションや一戸建ての情報を集めていると、ときどき見かけるのが「ゼロ円でマイホームが手に入る」「ローン負担がなく新築の家を持てます」「家賃収入を生む自宅」といった文言です。
どれも賃貸併用住宅のことですが、「一戸建てに賃貸住宅がくっついた建物で家賃収入が手に入る」ぐらいの認識で、一戸建てと比べてどんなメリットやデメリットがあり、取得する手順はどんな違いがあるか、といったもう少し深い情報は時間をかけて調べないと見つかりません。
そこで今回は、賃貸併用住宅と一戸建ての両方を取得した経験から得た知識を元に、「賃貸併用住宅vs一戸建て」として、2つの建物にはどんな違いがあるのか、知っておくべきポイントにしぼって解説します。
そもそも賃貸併用住宅とは何か
賃貸併用住宅と一戸建てを比較する前にまず知っておきたいのが、賃貸併用住宅に関する正しい認識です。「ゼロ円マイホーム」などの紹介のされ方だと分かりにくいのですが、賃貸併用住宅はマイホームというよりも、【住宅ローンで新築・取得できるアパート(集合住宅)】という表現のほうが実態に近いです。
つまり賃貸併用住宅は単なるマイホームではなく、アパートの一部を自宅として使っているだけであり、実は投資用物件を取得する方式に近いという事です。マイホーム購入も一種の不動産投資ではありますが、賃貸併用住宅はより不動産投資に関する観点や知識が大切になってきます。ただし専門的な知識が必要なわけではなく、難しいことは相談先となる各分野のプロが答えてくれたり代行してくれますので、不安になる必要は全くありません。
徹底比較!賃貸併用住宅vs一戸建て
上記の表が賃貸併用住宅と一戸建ての比較内容です。分かりやすくするため、都心の駅近の立地で新築した場合の取得金額や収支、蓄積できる資産を記載しました。すぐに分かると思いますが、収支や資産形成においては賃貸併用住宅が圧勝しています。以上の比較において知っておきたい重要ポイントを詳しく見ていきましょう。
家賃収入により毎月の収支が劇的に改善
上記の比較表の通り、賃貸併用住宅は家賃収入によって毎月の収支がほとんどありません。一方で一戸建てを購入すると、毎月の住宅ローン返済や固定資産税といった負担が大きくのしかかります。ただし築年数が古くなると賃貸住宅の家賃が下がり、得られる家賃収入が減ることで賃貸併用住宅でも少しずつ負担が増えていきますが、住宅ローンを返済し終わるまでの毎月収支の累計は圧倒的な差がついてしまいます。
さらに最終的に資産として残る不動産価値も、規模の大きい土地と建物を取得している賃貸併用住宅のほうが、より価値の高い不動産を得ることができます。収支だけでなく、資産形成の観点でも賃貸併用住宅のほうが有利なのです。
賃貸併用住宅のデメリットも知っておこう
経済的なメリットの大きい賃貸併用住宅ですが、一戸建てと比較してデメリットもあります。分かりやすいのが騒音問題です。これは分譲マンションでも起こる、集合住宅の宿命ですが、どうしても同じ建物を共有しているので、子供が走り回るなどで建物が揺れると、他の住居に音が伝わってしまいます。賃貸併用住宅の場合は木造が多いですので、分譲マンションに比べると少し騒音は大きくなりがちです。音が響きやすい場所には防音マットを敷くなどの対処が必要となります。
また人づきあいが苦手な人だと、入居者の方と出会う時のあいさつ等、付き合い方いについてどうしたら良いか気になる場合もあります。ただこれについては実際に賃貸併用住宅に住んでいると分かるのですが、入居者の方と出会うことは半年に1回あるかないか、という程度です。もし話しても普通の挨拶程度で、特に気にすることもありません。さらに私の場合、カップルで入居した部屋の2人とは入居時に話して以来、一度も姿を見る機会すらない状態です。
もし失業しても賃貸併用住宅なら大丈夫!?
不動産を購入したあとで一番怖いのが住宅ローン破綻です。せっかく家を買ったのに、給料が激減してしまったり失業したまま再就職もできない、となってしまった場合、住宅ローンが返済できずに泣く泣く自宅を売却し手放すことになります。運よく売却できた価格が住宅ローンの借入残高より高く売れれば良いですが、破綻した状態で急ぎで売却を進めた場合は安くしか売れず、差額の借金まで残るという悲惨な状態になる場合が多いです。
一方で賃貸併用住宅の場合、住宅ローン返済の負担がほぼゼロ円ですから、万が一失業してしまってなかなか再就職ができなくてもじっくり仕事を探す余裕があります。もし入居者が退去して家賃収入が減ってしまうと問題ですが、それまでに新しく仕事を見つけて収入を得ていれば良いのです。給与収入だけに頼っている会社員と比べれば、2つの収入源がある状態は経済的に非常に安定しています。
メリットは大きいけれど簡単に買えるわけではない
これだけ賃貸併用住宅はメリットが多いのですが、新築・もしくは中古を取得するまでの道のりは大変です。新築の賃貸併用住宅なんてほとんど存在しませんし、中古の賃貸併用住宅も市場にほとんど流通していません。賃貸併用住宅のような家賃収入が得られる不動産を、わざわざ売却したいと思う人は少ないですし、住宅ローン破綻して売却を迫られるようなこともほとんどないため中古物件が出てこないのです。
さらに土地から新築しようとしても、自宅+賃貸という規模の大きな建物を建てる必要があるため、床面積を多く取れる条件の土地を探す必要があり、さらに賃貸需要が見込める立地でないと賃貸併用住宅が成立しないという制約が多いです。土地情報はたくさんもらう事はできますが、なかなか条件に当てはまる土地を探し、さらに建築プランを作り、住宅ローンを希望借入金額で融資してもらう、という多くの乗り越えるべき課題があります。
経済的メリットのために取得までのハードルを乗り越えられるかがカギ
これまで見てきたように賃貸併用住宅は、家賃収入により毎月の収支が改善されるだけでなく、住宅ローンの返済が進んでいくことで何千万円という資産形成が自然にできてしまう、圧倒的な経済的メリットが魅力的な選択肢だと言えます。
ただし自宅と賃貸物件が合わさった建物ですので取得総額が大きく、希望に合う賃貸併用住宅を手に入れるには建築プランから考える必要があり、注文住宅を建てるときのように多くの手間と時間をかける必要があります。取得総額が大きいと住宅ローンの借入も大きな金額が必要になるので、それなりの世帯年収がないと資金の目途が立たないため検討すらできない事になります。
※年収が低くても賃貸併用住宅を取得する方法は別記事で解説しています
このように賃貸併用住宅は大きな経済的メリットを得るまでに、乗り越えるべきハードルがいくつか存在します。ただし本気で賃貸併用住宅を新築・取得しようとすれば、相談に乗ってくれるプロ、特に不動産会社や建設事務所は世の中にたくさん存在しています。まずは相談できるプロを見つけるため様々な会社に問い合わせてみることで、あなたが新たな一歩を踏み出せることを祈っています。