賃貸併用住宅の最大のメリットは家賃収入を生む自宅という事ですが、裏を返せば最大のデメリットにもなり得ます。つまり空室の場合は何も収益を生まないばかりか、自宅して使っていない住居部分の住宅ローンを返済しなければなりません。
とはいえ空室リスクを恐れて賃貸併用住宅を新築せず、普通の一戸建てでは家賃収入を生むことはありません。空室リスクを恐れるのではなく、万が一の状態になっても対応できる方法を学び、空室が発生しないようにリスクをコントロールしていくという姿勢が大切です。
立地を厳選して賃貸併用住宅を建てる
空室リスクを制する最大の対策が、賃貸需要の手堅い立地に賃貸併用住宅を建てる事です。賃貸需要の旺盛な土地の価格は高いですが、資産価値が維持されるのでローン返済が進むと着実に資産形成でき、空室にもなりにくいので堅実に家賃収入を得ることができます。
逆に賃貸需要の少ない地域や、ドンドン空き地に賃貸物件が建つため供給過剰になっている土地に賃貸併用住宅を建ててしまうと悲惨です。こうした立地の地価は安いので利回りが高く魅力的に見えますが、実際は空室が長く続き家賃を大幅に下げざるを得なくなり、想定していた家賃収入が得られないことがよく起こります。
さらに地価が安い地域は土地が値下がりし続けている場所が多く、せっかくローン返済が進んでも土地の資産価値がドンドン下がっていくために、資産形成が全然できないという事態になる可能性があります。長い時間をかけて住宅ローンを返済し終わっても、残るのは古家と価値のない土地、ではあまりにも悲惨です。
需要が高く供給の少ない間取りにする
立地と合わせて考えなければならないのが、その土地における間取り別の需給バランスです。ほとんどの地域では大家さん(貸主)が一番収益力が高くなる、20㎡未満の狭いワンルームの賃貸物件であふれかえっています。
逆に人気の1LDK以上の広い間取りは大家さんからすると、部屋数が多く取れないためにあまり儲からないため、1LDK以上の間取りは供給が少なく、競争が激しくないために安定した賃貸需要が見込めます。ただし広い過ぎる間取りは借り手も限られるため、1LDKぐらいの間取りの需給バランスがちょうどいいです。
収益力が高くなる狭いワンルームをたくさん作っても、結局は空室期間が長くなったり、競争のために家賃を下げることになれば、実質的な収益力は低くなります。どんな間取りにすれば良いのかは、そのエリアの賃貸物件の仲介業者にどんな間取りが人気か聞いたり、Webで賃貸需要のデータを調べることで簡単に分かります。
もし空室が長期化してしまったらどうなるか
空室を発生させないように多くの検討を重ねて賃貸併用住宅を建てることができたとしても、空室リスクがなくなるわけではありません。万が一の時には、家賃収入が全くない状態で、給料など他の収入から住宅ローンの返済する事になります。
ただし賃貸併用住宅の借入を住宅ローンで行っていれば、家賃収入以外の収入だけで十分にローン返済ができる金額に抑えられています。銀行が住宅ローンの借主が給料などの収入で返済できる金額までしか融資をしませんから、家賃収入がゼロでもローン返済はできるようになっているのです。
つまり空室がずっと続くという最悪の事態が発生したとしても、銀行から借入可能な金額は破綻しないような金額までなので、賃貸併用住宅でローン返済ができなくなり破綻するという可能性は非常に低くなっています。
空室リスクを受け入れて収益最大化もあり
空室リスクを減らす事を中心にご紹介してきましたが、一方で空室リスクを受け入れる代わりに高い収益力を追及する、という賃貸経営の方針もあります。
1LDKを作れる広さがあるなら、同じ空間でワンルームを2戸作れます。1LDKの家賃が10万円の地域ならば、ワンルームの家賃はだいたい6万円、ワンルーム2戸で12万円の家賃収入になります。
築年数が古くなっていくとこの金額差は縮まり、ワンルームの空室期間が長くなったりして実質的な家賃収入が逆転する可能性が出てきますが、毎月2万円の余分な収入は大きいです。将来の空室リスクが高くなることと引き換えに、直近の収益最大化も“逃げ切り”を狙う魅力的な選択肢です。
賃貸併用住宅の空室リスクは対処できる
このように、賃貸併用住宅における最大のリスクである空室が発生した場合でも、給料で住宅ローンは返済可能な金額ですし、建築プランの段階で賃貸経営の視点を持ち間取り考えておけば、空室は恐れるようなリスクではなくなります。
賃貸経営の方針によっては、あえて空室リスクを取る方法もありますから、空室リスクと収益のバランスを具体的に考えておけば、空室で家賃収入がない状態を必要以上に恐れることはなくなります。
実際に建築プランを考える時には様々なプロがアドバイスをくれますから、迷って賃貸併用住宅を建てるのが遅くなるぐらいなら、不動産会社や設計事務所に早く相談に行ってしまいましょう。1カ月建てるのが遅くなれば、1カ月分の家賃収入を損してしまうのですから。