年収400万円以下でも賃貸併用住宅を取得する方法


賃貸併用住宅は安全かつメリットの多い不動産投資の手法ですが、自宅部分と賃貸住宅部分の合わさった大きな建物を建てることになるため、普通の住宅購入比べて土地や建物の取得金額が高額になりがちで、この高額な取得金額をまかなえるだけの住宅ローンが必要になります。

ところが住宅ローンの借入可能金額の上限は年収によって決まるため、年収が低い世帯では賃貸併用住宅を建てるのに必要な住宅ローンを借り入れることができない場合があります。

例えば年収400万円の場合、約7倍の2800万円が住宅ローンの借入上限金額の目安です。この場合、資産性があり賃貸経営に有利な都市部・駅近の土地では価格が高過ぎて賃貸併用住宅を新築・取得することができません。

では年収が低い世帯では、賃貸併用住宅を新築・取得することを諦めなければならないのでしょうか…?ここで諦めましょう、では記事が続きませんから、もちろん年収が低くても賃貸併用住宅を新築する方法はあります。

ではどんな方法なら年収が低くても取得できるのか。「住宅ローンの借入上限金額を増やす」「取得する賃貸併用住宅を工夫する」の2つの観点から、その実現方法を見ていきましょう。


住宅ローンの借入上限金額を増やす


借入上限金額を増やすには、世帯年収を増やすことが最も有効かつほとんど唯一の方法です。

住宅ローンはおおよそ世帯年収の7倍前後が借入上限金額となり、ここに頭金として手持ちの現金を加え、仲介手数料などの購入諸経費を差し引き、予備の生活費を残して、賃貸併用住宅の取得に使える金額が決まります。

ただし頭金として多額の現金を用意できる人は少ないですから、取得金額の大きい賃貸併用住宅を新築するには、やはり住宅ローンの借入上限を増やす=世帯年収を増やすことが効果的です。

また余分な収入を手に入れる事は年収を増やすだけではなく、頭金(手持ち現金)を増やす事でもあるので、賃貸併用住宅を新築する事の実現が一気に近付きます。


1.世帯内での働き手を増やす


確実かつ最も早いのは、家族の中で働き手を増やす事です。この方法を簡単に実行できるのは専業主婦の世帯です。旦那さんの年収が400万円の世帯なら、奥さんが派遣で働いて200万円の年収になれば、世帯年収は600万円になります。

ただし近年は共働き夫婦のほうが多いですし、専業主婦といってもほとんどの場合は子育てに追われている家庭が大半でしょうから、簡単ではありませんが方法としては一番確実です。

あとは奥さんがパートタイムではなく、派遣社員や社員としてフルタイムで働くことで年収を増やす方法も当然有効です。旦那さんの年収が300万円・奥さんのパート収入が100万円で合計400万円の世帯なら、奥さんがフルタイム勤務で年収300万円になることで世帯年収を600万円にする事ができます。


2.副業や兼業をする


会社員は忙しいものですが、本気になれば自分の意思で副業を行う時間はある程度は確保できるはずです。

最近はWebやIT技術の発達により、クラウドワークスやランサーズ等のサイト経由で仕事の請け負いからWebでの納品まで完結できますし、オークションや個人でのオンラインショップ運営、ブロガー、YouTuberなど、副業で稼ぐための選択肢は無数にあります。

体力に自身があれば、早朝や夜間の仕事をやったり、週末に働くこともできます。最近は外国人観光客が増えていますから、語学に自信がある人なら観光系の副業や民泊で稼ぐこともできます。


3.家賃収入を得る(増やす)


不動産からの家賃収入があると、多くの銀行では世帯年収として合算して見てくれます。ただ、ローンを使って購入した不動産からの家賃収入は合算対象にならないなど、銀行によって扱いは大きく変わってきますが、家賃収入は「お金で年収を増やす」ことが簡単にできる方法です。

これは不動産投資をすることになるわけですが、この時に小規模な不動産投資で賃貸経営の経験を積んでおくと、賃貸併用住宅を建てる時にとても役立ちます。どの立地や土地を選ぶのか、どんな間取りや建築プランなら安定した賃貸需要があるか…こうした事を実践を通して学ぶことができるからです。

実は私も賃貸併用住宅を新築するとき、会社員としての年収だけでは借入可能金額が足りませんでしたが、賃貸用の一戸建て2軒からの家賃収入があったおかげで希望する金額の住宅ローンを借り入れることができました。

詳しくは別の記事で書きたいと思いますが、都市部ならワンルームマンション、郊外なら一戸建てを中古物件で探し、数百万円の現金で購入する事から始めることをオススメします。


取得する賃貸併用住宅を工夫する


賃貸併用住宅を取得するには無数の選択肢があります。例えば立地や土地選びには「都市部と郊外」「駅近と駅遠」「下町とニュータウン」といった選択肢がありますし、建物プランや間取りは「シングルとファミリー」「若年層と年配層」「収益性と安定性」といった選択肢があります。

また賃貸併用住宅は新築する事が多いですが、中古で安く手に入れる方法もあります。こうした取得方法の中には、年収が低くても取得できる賃貸併用住宅の選択肢が存在します。


1.価格の安い土地で新築する


住居を新築する費用は、土地代金と建物代金の2つによってほぼ決まります。建物代金を安くするといっても限界がありますが、土地ならば同じ広さでも立地や形状によって10倍以上の差が出ることはよくある事です。

つまり安い土地に賃貸併用住宅を建てれば取得総額を低くすることができ、年収が低くても新築することができる事になります。ただし価格の安い土地に賃貸併用住宅を建てることには2つのデメリットがあります。


1つ目は家賃収入が入らない、もしくは少ないというデメリットです。


安い土地は郊外であったり、駅から遠かったり、旗竿地や不整形地といった、不便・不人気な条件を持つ土地となります。すると賃貸住宅としての魅力がないために借り手が付かず家賃収入が手に入らなかったり、安い家賃でしか借り手がなく、想定よりも低い家賃収入しか得られない事になります。

ただし工夫しだいでこうしたデメリットは乗り越えることも可能です。郊外で駅から遠くても、駐車2台以上を確保し幹線道路に出やすく、シンプルでもオシャレで住みやすい賃貸住宅を作り出せば、期待する家賃でも借り手を見つける事は可能です。

都市部でも旗竿地に長屋形式の賃貸併用住宅を建てることで、そこそこ便利な立地でも安く土地を購入し、間取りの工夫で日当たりの悪さを感じさせない賃貸部屋を作り、他のアパートと変わらない家賃収入を得ることもできます。


2つ目は価格の低い土地は値下がりしやすく、資産性があまりないというデメリットです。


賃貸併用住宅の魅力として、家賃収入で住宅ローン返済をしているうちに、土地と建物が手に入り資産形成できる点があります。ところが建物は劣化しますし、土地の価値も下がってしまうのでは資産形成に全く役に立ちません。

最も小規模な賃貸併用住宅である二戸一棟(≒二世帯住宅)だとしても、建築費用は2000万円~2500万円程度はかかってきます。例えば年収400万円の場合、住宅ローンの借入上限金額は2800万円ですから、建物代金として2500万円確保すると、土地に使える金額は300万円+頭金(手持ち現金)の範囲になってしまいます。

資産性がない土地というデメリットを解決する事は難しいですが、取得総額が低いという事は住宅ローンの返済額も少ないので、利回り(=収益性)はよくなります。資産性ではなく収益性の高さを追求し、家賃収入がローン返済額を超えるようならば資産性を気にしなくてもよくなります。


2.中古の賃貸併用住宅を購入する


一戸建てでもアパートでもそうですが、土地から新築すると高額になる物件でも、中古物件ならば割安に取得する事ができます。

ただし世の中にある賃貸併用住宅自体が少ないですから、市場に出回っている中古物件は一戸建てやマンションと比べると、何百分の一とか、何千分の一の物件数しかありません。さらに中古物件情報のほとんどは首都圏に集中しており、その他の地域では物件を選ぶことすらできない程度の数しかありません。

選択肢がほとんどないので気に入る条件の物件にはなかなか出合えませんが、運よく自分が希望する条件に当てはまる中古の賃貸併用住宅が出てくれば、新築と比較すればかなり割安に物件を購入する事ができます。

賃貸併用住宅はアパートのようなものですから、よほど良い立地や大型物件でなければ3000万円以下で購入が可能です。年収が400万円ならば住宅ローンで2800万円まで借入可能ですから、年収が低くても購入できる可能性はぐっと高まります。

しかし注意点として、中古の賃貸併用住宅の賃貸部分に入居者がいる場合、ほとんどの銀行は住宅ローンでは融資してくれず、アパートローンとしてしか購入資金を融資してくれません。住宅ローンという金利の低さが魅力の賃貸併用住宅なのに、金利の高いアパートローンで購入していては意味がありません。

そのため中古の賃貸併用住宅は賃貸部屋に入居者がいない全空の物件を探す必要があります。逆に全空ならば二戸一棟のアパートの一部屋に自分(家族)が住むことで、住宅ローンでアパートを購入することができます。


3.中古の一戸建てやアパートをリフォームで賃貸併用住宅にする


中古の賃貸併用住宅が見つからないならば、自分の手で作り出してしまえば良い、という方法もあります。この方法で賃貸併用住宅を所有している人は多く、子供が出て行き余った部屋を賃貸用の部屋にした、という事例はよく聞きます。

アパートをリフォームして自宅部分を作り、これに住宅ローンの借り入れをするというのはなかなかハードルが高いですが、二戸一棟のアパートならば大規模なリフォームをしなくても住宅ローンが使えます。

また中古の一戸建てならば豊富な選択肢がありますから、リフォームによって賃貸部分を作り出せる物件を探し出すことは十分に可能です。完全分離型の二世帯住宅ならリフォームいらずで賃貸住宅を入手することが可能です。

ただし中古の一戸建てをリフォームして賃貸部屋を作る場合、リフォームローンは金利が高いので、リフォーム費用が高額になる場合は賃貸併用住宅を作り出す意味がほとんどありません。あくまで簡単なリフォームで賃貸部分を作り出せる物件を探すことがポイントとなります。


年収400万円以下でも賃貸併用住宅を新築・取得するには


今までの記事の通り、「世帯年収を増やす」「取得する物件を工夫する」という2つの観点から年収が低くても賃貸併用住宅を新築or中古で取得する方法を案内してきましたが、やはり王道は世帯年収を増やす事だと私は思います。

世帯年収を増やせば頭金も貯まりますし、収入を増やそうとする事で新しい経験をしたりすることで、自分や家族の持つ世界を広げられるというメリットがあるからです。

特に小規模な不動産投資を始めることは、世帯年収の増加・頭金の積み増し・賃貸経営の経験・資産形成・不動産関連の人脈作りと、とても大きなメリットが手に入ります。

年収が低くても賃貸併用住宅を手に入れたい、という意思を持つことで、世界は大きく広がります。諦めずに出来ることを積み重ねれば、きっと満足できる家を手に入れることができると思います。