利回りという言葉は投資効率を把握するのに便利な指標です。不動産投資だけでなく、国債や預金などでも使われますし、株の配当利回りという言葉でも使われていますね。ただし株や債券などのように売買や運用にほとんど時間を使わない金融商品への投資に対し、不動産投資、というより賃貸経営の場合は購入だけでも大変なうえに、管理運営に手間がかかります。投資というよりは事業に近いです。
そこで賃貸経営の投資効率を考える指標としては、利回りだけでなく時給でも考えることで無駄な動きを減らすことができます。あなたがご存知の通り、時間は有限かつ最も貴重な資源なので、収益性の低い無駄なことはできる限り行わないようにして、より収益性の高い活動に時間をかけることで賃貸経営の収益が増えるようになります。
つまり時給を基準にして投資活動(経営活動)を決めることで、収益を増やすことができるのです。時給という考え方はアルバイトや派遣でも一般的ですし、普通の会社員でも働いた時間と年収で計算してみることで、副業や投資がどの程度効率的かを確認することができます。
時給計算で不動産投資・賃貸経営を考えてみると、賃貸経営が秘めるすごい仕組みに気付くことができます。
入居付けできればその後ずっと家賃が入金される
ここで賃貸経営の収益を得る源泉、家賃収入について考えてみます。株や債券と違い、家賃収入は創意工夫によって増やすことが可能です。空室があれば入居者を見つけることで家賃収入を得られますし、古くなった部屋をリフォームやリノベーションをして部屋の価値を上げることで家賃を上げることもできます。
こうして入居者が物件に入居すれば、退去するまでずっと家賃を入金してくれます。家賃滞納をされる場合もありますが、9割以上の人は忘れていたり一時的な金欠なだけなので、請求すれば支払ってくれます。ほとんど手間はかかりません。
つまり退去されない限り家賃収入が入ってきますので、できる限り退去されないように住居の提供を行うことが効率=時給を上げる秘訣です。昔は入退去を繰り返すことで礼金で収益を増やそうという考え方がありましたが、近年はそもそも礼金をもらえる地域が少ないですし、礼金をもらったとしても不動産会社への広告費として消えてしまうことがほとんどです。ずっと賃貸してもらうほうが収益が上がります。
家賃収入が定期的な収入であることに加えて、賃貸経営ではほとんど手間をかけずに収益を上げることができる大きな理由がもう一つあります。
不動産に関するあらゆる業務に代行会社が存在する
賃貸経営は様々な業務が発生します。新築から始めるならば土地探し、建物の建築が必要ですし、建物ができあがれば入居者探しと契約が必要です。土地や建物の購入資金を銀行から借り入れる必要もあります。さらに入居後も家賃の入金管理や建物の維持修繕、入居者や近隣住民のトラブル対応、入退去があればリフォーム手配、記帳や税金支払いなど、幅広い業務に対応する必要があります。
ところがこれらの業務は全てプロである代行会社が対応してくれます。賃貸物件の管理は不動産会社が家賃収入の3~5%程度で全部対応してくれますし、建築は工務店、リフォームはリフォーム会社、資金調達は銀行、記帳や税務は記帳代行会社や税理士が対応してくれます。つまり賃貸経営を行っている大家さんは指示を出したり判断を下したりするだけで、活動時間はそこまで必要ではありません。
業務のほとんどを外注することで、非常に効率的な経営ができている事業だと言えるでしょう。
具体的に大家さんの時給はどのくらいか
建物の新築や中古物件の取得を考えるとややこしくなるため、シンプルに家賃収入を得るための活動である入居者探しから退去までの一連の流れを考えてみましょう。賃貸住宅の平均居住期間は学生だと4年以下がほとんど、高齢者だと6年以上がほとんどと差が大きいですが、ざっくりと全体平均で居住年数を5年とします。
家賃についても都市部と郊外で違いますし、ワンルームと3LDK以上では倍以上の差が発生しますが、これもざっくりと7万円とします。すると入居期間中の家賃収入は7万円×12ヶ月×5年=420万円になります。
そのうち不動産会社による管理費が5%として21万円。運営にまつわる修繕費や共有部分の光熱費などでこれも5%として21万円。更に入退去によるルームクリーニングや住宅設備の入れ替え全体を1回分で30万円とします。記帳代行や税務も賃貸経営の規模によりますが、年間15万円・5年で75万円とします。すると5年で得られる利益は420万円-147万円=273万円になります。
次はこの利益を得るために使った時間の計算です。不動産会社に管理をお願いしていれば、確認するのは毎月の家賃の入金ぐらいです。5分×12ヶ月×5年=300分です。つまり5時間。入居期間の5年で一回だけトラブルが起きたとすれば、報告受領と指示出しで合計3時間。確定申告に関する領収書の取りまとめと郵送手配で毎月10分かけたら5年で10時間。毎年の確定申告で2時間対応が必要なら5年で10時間。他にもこまごまとした案件を含めてだいたい30時間です。
これで時給を計算すると273万円÷30時間=9.1万円が時給となります。900円のアルバイトに比べ約100倍も効率が良いです。もちろん物件の取得にも時間がかかりますし、不動産購入には借入金だけでなく頭金も必要です。もちろん不動産や住宅に関する知識があってのことなので単純な比較はできませんが、すごい効率のよい収入だということが分かります。
働いて得たお金で家賃収入という効率のよい収入を増やしていく
金融商品への投資は手間もかからず増やすことができますが、努力や創意工夫によって確実に収入を増やすことが難しいです。時間は必要ないけれどリスクが大きく収益が安定しない、時給換算できないという事です。
一方で会社員として働いて得るお金や、副業や事業によって得るお金は1日のうち多くの時間を投下しなければ収入を得られません。自分の手間がかからない仕組みを作り上げて短時間労働で莫大な収入を得る人もいますが、私を含めた多くの人は一生懸命働いて給料を得るのが精いっぱいのはずです。
その点、不動産投資や賃貸経営によって得られる家賃収入は、多少の努力や活動が必要ですが会社員の勤務時間に比べればごくわずかな時間で済みます。時給換算で9万円もの高効率で収入を得られています。サラリーマンの時給が1000~2000円、弁護士のような高給取りでも時給5000円と言われますから、いかに家賃収入が効率のよい収入かがよく分かります。
ただし不動産投資には知識と頭金が必要になるので、給料や副業から得た収入をコツコツ貯金しながら勉強も進めていきましょう。その第一歩として賃貸併用住宅での家賃収入こそ、普通の人にはぴったりの方法だと思っています。