一戸建ての自宅を建てることと、賃貸併用住宅の一番の違いが建物の違いです。自宅に賃貸住居を付ける形になるため、普通の一戸建てよりも大きな建物になります。さらにその大きな建物の内部で自宅部分と賃貸部分をどう分けるのかで様々なパターンがあります。
今回はこの建物のプランの一般的な例を一通り見てみましょう。前提としては普通のサラリーマンが土地から探して、低金利の恩恵を受けられる住宅ローンを使う、という場合のプランとしています。住宅ローンを使うには、建物に対する自宅部分の床面積を50%以上にする必要がありますので、これらを前提とした建築プランとなっています。
◆2階建ての賃貸併用住宅
A.2階建て 上下分割 2階が自宅
階段が1つで済むので、長屋形式のような内階段にしても建物面積を有効に活用できるし、外階段の場合も費用を安くできるプランです。また2階のほうが日当たりが良い事が多く、賃貸住居からの音の問題で悩むことも無いので、自宅を優先する場合はこのプランになります。
最近では天井高を高くしてロフトを設けるなど、建築費は高くなりますが空間を最大限活用するようなプランも人気です。ただし賃貸部分が不人気である1階のみなので、将来的に客付けに苦労し、家賃収入の減少になってしまう懸念があります。
B.2階建て 上下分割 1階が自宅
年配の方がいる家庭や、ベビーカーを利用する家庭の場合は段差のない自宅のほうが良いので、1階を自宅とするパターンもあります。賃貸部分が2階になりますので、賃貸経営としては将来的にもやりやすく、家賃収入を安定させる効果が期待できます。ただ一方で、アパートのような外階段+廊下を作ると建築費が高くなりますし、長屋形式にして建物内に階段を作ると1階の自宅が狭くなる、というデメリットがあります。
C.2階建て 左右分割
建物を上下に分割して使うと、どうしても上の階から下の階への音の問題が発生してしまいます。特に2階建ての場合はほとんどが木造なので、音の問題はどうしても発生してしまいます。そこで左右に建物を分割し、半分を自宅部分をする事で音の問題を発生させないという考え方があります。
賃貸部分は上下で分割して1Kや1DKの間取りを上下2戸としてもいいですし、1戸の2LDKとしてファミリータイプとして貸し出すようにしても良いでしょう。また立地は都心の駅近に限られますが、建物が大きければ賃貸部分をシェアハウスにして高収益を確保することも出来ます。
◆3階建ての賃貸併用住宅
D.3階建て 2階部分分割 2・3階が自宅
都心の駅近の地域では土地価格が高いですが高さのある建物を建てる事ができます。そこで土地は狭いけれど3階建ての建物を建てることで、土地代を抑えて床面積をある程度確保する、というプランが出来上がります。3階建てで出来る限り賃貸部分を作り出そうとすると、1階から3階に一気に上る階段を作るのは大変なので、2階を分割して2階の半分と3階を自宅とするプランが一般的です。
E.3階建て 2・3階が自宅
前述のDのプランは2階を壁で区切ってしまい、もったいない使い方になってしまうので2・3階を自宅として使ったほうがシンプルな建物となり使いやすくなります。また3階建てを建てる場合は地価が高い地域が多く、土地が狭くて建物も小さくなる場合が多いので、自宅部分の広さをしっかり取る場合はこのプランになります。賃貸部分が1階のみとなり賃貸付けが少し不利ですが、立地が良い場合が多いのでそこまでは困らないでしょう。
F.3階建て 3階が自宅
このプランは他の『自宅部分の床面積が50%以上』のルールから外れています。ただ、一部の金融機関では自宅の床面積が3分の1以上であれば住宅ローンを出してくれます。ただし金利は高いです。また他の金融機関では、自宅部分は住宅ローンで賃貸部分はアパートローン、という融資のやり方をする場合もあります。アパートローンは住宅ローンより金利が高いので、どちらにせよ金利は高くなってしまいます。
低金利のメリットがなくなる事を考えると、賃貸部分で高い家賃収入が確保できる、といった特殊な場合に限られますが、家賃収入を優先させる場合は選択肢として知っておくと良いかと思います。