千葉県の都市部からかなり離れた郊外に建つ、かなり大規模な家が売りに出されているのを見たことがあります。いわゆる豪邸と呼ばれるような建物で、広大な敷地に鉄筋コンクリート造の立派な建物が建っていました。駐車場は10台くらいは余裕で停められそうな広さで、こんな家に住む人は想像できないほどの金持ちなのではと妄想が膨らみます。
ところがその豪邸は新築された時には土地と建物を合わせて数億円のお金が注ぎ込まれたらしいのですが、いざ売却しようとしたところ、購入者が全く現れないためずるずると値が下がり、今では新築時に使った金額の10分の1でも売れずに残っているという話でした。
今回は不動産の資産価値の観点から、この郊外に建つ豪邸の悲劇を参考に、資産価値のある不動産とはどのような物件なのか、3つの重要ポイントについて確認していこうと思います。
1.立地こそ不動産価値の中心
豪邸の価格が暴落してしまった一番の原因は、需要のない場所に豪邸を建ててしまったことです。都心でもなく別荘地でもない、自然はあるけれど住民が少ない郊外の土地に豪邸を建てても、そこに住みたいと思う人がいなければ不動産に価値はありません。しかも郊外にあるブランド立地でもない地価の安い地域で、高いお金を出してわざわざ豪邸に住みたい人はほとんど存在しません。
しかも豪邸も建築物なので時間が経つに連れてどんどん古くなり、建物は劣化すると同時に内装や住宅設備は古めかしいものになっていきます。多額のお金をかけた建物は築年数の経過とともに価値が下がっていき、土地は郊外で地価も安いためあまり資産価値はありません。価値の中心である建物価値が、時間とともに失われていくわけです。
同じ4000万円の一戸建てを購入するとしても、土地が1000万円の場所で3000万円の立派な家を新築するよりも、土地が3000万円の立地で建物価値が1000万円の中古住宅取得やローコスト住宅を建てるほうが、資産価値という観点では圧倒的に後者が良いという事です。劣化しない資産である土地こそが資産作りの中心なので、地価の高い場所ほど資産価値が維持されやすいということになります。
また土地に価値があるという事は、購入価格の大半が建物価値であるマンションも資産価値の観点ではダメなのか、という指摘は的外れです。マンションは所有権の物件だとしても土地の一部しか所有していないため、例えば4000万円のマンションを購入すると建物価値が3500万円で、土地の持ち分の価値は500万円という割合になるのが標準です。
ところがマンションは駅近くの便利な立地に建っていたり、商業施設や病院・保育園などが敷地内に併設された複合開発された大規模マンションであったり、タワーマンションのように他にはない眺望やコンシェルジュサービスを受けられたりと、特別な“立地”を中心とした価値が存在します。
だからこそ都心の築40年を超えるようなマンションでも、その立地に価値を見出す人が多くいるために高値で取引され続けています。一戸建てを購入するなら土地の価値を、マンションを購入するなら利便性や眺望を含めた立地という価値が高い不動産を購入することで、資産を生むマイホームを手に入れることができるのです。
2.買い手の多い価格帯ほど資産価値が維持しやすい
不動産だけでなく多くの物品や取引は需要と供給のバランスで価格が決まります。特に不動産は高額な商品であるため、買い手が多いか少ないかにより資産価値や売却価値に大きな差が生まれてしまいます。
例えば2000万円の一戸建てやマンションならば多くの人が購入できるため価格が下がりにくいですが、1億円を超えるような物件では買い手が限定されるため、購入時の価格に比べて大きく値が下がるリスクも大きいです。そのため豪邸を建てても購入者が少ないために、資産価値は大きく値下がりしてしまう可能性が高いのです。
具体的な例を考えてみましょう。10人の大家族だからと7DKの大きな一戸建てを建てたとしても、そんなに個室が多い家よりもリビングの広い間取りの家に住みたいという3~4人の世帯のほうが圧倒的に多いですし、7DKの大きくて高い一戸建てよりも、もっと安い2LDKの家のほうが購入したい人は多くなります。買い手が多いということは取引価格が維持されることになります。
地方の都市部や首都圏近郊の都市部では3000万円以下、東京都心やブランド立地の住宅街では5000万円以下の価格帯が需要が多いと言えます。ただいくら安くても需要がない立地の一戸建てやマンションは資産価値の維持は難しいので、不動産の価値と価格帯のバランスをよく観察することが必要です。不動産情報を定期的に見ていれば、このバランスを理解できる相場観を養うことができます。
3.高齢者が気に入る家は価値が高い
実はこれも需要と供給のバランスの話となるのですが、高齢者は不動産売買における最大の母集団かつ購入できるだけの資金・資産を持つ得意客です。高度経済成長期の恩恵を受けることができた60代以上の年代に日本の富は偏って存在しており、多くの高齢者が不動産を購入できるだけの資産を保有しています。
しかも団塊の世代を中心とした人口の多い世帯でもあるため、30代や40代の初めてのマイホーム取得を考える世代と比べると不動産の取引価格に与える影響は圧倒的です。60代以上の世代が不動産価格を左右すると言っても過言ではありません。
そのため病院が近くにあったり、買い物などに便利な都市部であったり、移動に便利な駅近の立地や幹線道路に出やすい立地、役所や自治体施設が近くにあると、そうした利点のあるマンションや一戸建ては高齢者が高額でも購入するため資産価値が下がりません。むしろ貴重な立地の物件では値上がりすることもしばしば見られます。
特に最近はマンションがバリアフリーになっており、上層階でもエレベーターで移動できて、住居内は1フロアで階段がなく足腰に負担がないため高齢者にとても人気があります。建物の管理も管理組合がやってくれるので家の維持管理も必要ありません。
今後マイホームを購入するならば、便利な立地の一戸建てや、高齢者に嬉しいメリットのあるマンションなどが資産価値のある不動産となっていくので、こうした視点で物件を探してみることをオススメします。