「賃貸併用住宅」と「自宅&投資物件」はどちらが良いのか


賃貸併用住宅を検討する人はなぜ賃貸併用住宅の取得を考えるのかというと、マイホームを検討していると同時に、資産運用の観点として家賃収入を得られるようになりたいと考えているのだと思います。

ではマイホーム購入と家賃収入を得ることを切り離して、自宅の購入をするのと並行して不動産投資の物件を探すこと、つまり「自宅&投資物件」をそれぞれ別に購入するのは、賃貸併用住宅を取得するのと比べて何が違うのでしょうか。

今回は収支や損得といった金銭的な観点だけでなく、お金以上に大切な要素も含めながら、「賃貸併用住宅」と「自宅&投資物件」の2つの選択肢を比較してみたいと思います。



一般人は「賃貸併用住宅」、不動産のプロや投資家は「自宅&投資物件」が有利


賃貸併用住宅はデメリットだらけ!?

私の考えている結論を先に書いてしまうと、不動産に関する知識や経験のない(少ない)人は賃貸併用住宅が有利で、逆に不動産投資家など不動産に詳しい人は自宅と投資物件は別に購入するほうが有利です。

特に専業不動産投資家として活動しているようなレベルの人になると、賃貸併用住宅はほぼゼロと言っていいほどメリットがなくなってしまいます。住宅ローンの金利よりも安い0%台の金利でアパートローン・事業性融資を受けることができ、収益性を最大限まで高めるような建築プランで安く建築し高い家賃を実現させ、地価の高い土地でも建物を新築できるだけのローンを組むことができるからです。

不動産投資や賃貸経営のプロから見ると、賃貸併用住宅というのは中途半端な存在で、自分の住む場所も固定されてしまう不便な物件に見えてしまうのです。ただしこの考え方が当てはまるのは、不動産投資のプロであるごく一部の人であって、多くの人にとって賃貸併用住宅はメリットのほうが圧倒的に多くなります。

賃貸併用住宅は不動産投資の第一歩として最高の投資法

なぜ一般人にとって賃貸併用住宅が良いのか。賃貸併用住宅のメリットは、不動産投資用にアパート一棟を購入しようとしたときと比較するとよく分かります。

賃貸併用住宅は住宅ローンを利用できるので、賃貸経営の実績など関係なく、とても低い金利でローンの借り入れができます。一方でアパート一棟を購入しようとするならば、賃貸経営の実績の有無を考慮され、実績がない新米不動産投資家には高い金利で、しかも物件価格に対して5~8割までの融資額しか貸してくれず融資期間も短いため、多額の現金の準備が必要になります。

また多くの場合、最初の投資用物件を購入しようとすると自宅から離れた場所で購入することになると思います。投資効率の高さを求めて高利回りの物件を探していくと、どうしても地価の安い地域になりがちですし、見つけた割安な投資物件が自宅近くである可能性はほとんどないでしょう。

投資用物件が自宅から遠い場合、建物や入居者の管理は管理会社に丸投げせざるを得ません。特に遠隔地に投資用物件を所有した場合、現地確認をするだけでも大変なため状況を把握できなくなり、悪意のある管理会社だった場合に不当に高い修繕費などを請求され、カモにされてしまいます。

他にも多くの項目で一般人にとっては賃貸併用住宅のほうが有利な点がありますから、次の項で不動産投資の投資法として、賃貸併用住宅とアパート一棟を項目ごとに整理しながら比較してみたいと思います。

賃貸併用住宅と木造アパート一棟の特徴を徹底比較


下記に新築で賃貸併用住宅を建てる場合と、新築アパートを建築する場合を各項目で比較してみました。購入できる価格帯は世帯年収や購入物件によって大きく変わるため比較項目に入れていません。また利回りは都心の好立地(人気駅から徒歩10分など)に物件を取得した場合を例示しています。

比較項目 賃貸併用住宅 木造アパート
必要な現金/頭金 ○ 少ない × 多い
条件に合う物件 × あまりない ○ 豊富にある
投資に関する勉強 △ ある程度必要 × 不勉強だと騙される
利回り × 3.2%(5.5%)※ △ 6.5%
借入金利 ○ 0.5%~1.5% △ 1.5%~3%
最大借入期間 ○ 35年 × 22年
管理しやすさ ○ 簡単 × 大変 or 丸投げ
運営維持費 ○ ほぼゼロ × 管理費+修繕
賃貸経営の経験 ○ 自然と増える △ 率先して動く必要あり
自分の住む場所 × 自由なし ○ 全くの自由
家族との関わり ○ 増える × 減る
所得税 △ 少し増える × かなり増える

※賃貸併用住宅の借入金利でカッコになっているのは自宅部分も賃貸した場合の利回り

必要な現金/頭金

よほど高額な土地や建築単価の高い構造の家を建てない限り、賃貸併用住宅は住宅ローンの借り入れ上限額まで簡単に借りれることができるので、手持ち資金が少なくても購入することができます。

逆にアパートの建築となると賃貸経営の事業実績がない人に多額の融資をしてくれる銀行や金融機関はほとんどないため、手持ち資金を500万円~1000万円以上は準備する必要があります。一部の銀行は実績のない投資家にも多額の融資をしてくれますが、貸出リスクに合わせて金利が4%以上と高い場合がほとんどです。

条件に合う物件

賃貸併用住宅は自宅として住みたい立地や条件が揃い、さらに賃貸経営としても長期間収支が成り立つような土地を探すことになります。マイホームの条件と不動産投資の条件という2つの条件に合う物件が見つかるまで探すことになります。私も探し始めてから1年半経ってようやく理想の土地を購入できました。

新築の木造アパートは建て売りのものも豊富にありますし、建築条件付き土地として販売されている物件、さらに建築条件なしの土地を買って自由に設計・建築してアパートを建てるという選択肢もあります。

投資に関する勉強

賃貸併用住宅の場合は資産性の高い土地さえ選べば、建築プランにそこまで工夫をしなくても賃貸経営は十分成り立ちますし、資産形成は確実にできることになります。自宅の間取りは自分事なので細かい点まで気付きますし、家族も喜んでチェックしてくれます。たとえ自宅が使いにくいと思っても我慢すれば良いですし、住んでしまえば慣れるものです。

さらにもし競争力のない間取りで空室期間が長引いても、部屋の飾り付けや不動産会社への挨拶など、簡単な工夫で空室を埋める行動が取りやすいです。運営維持費も極限まで下がっているので、出費も最小限に抑えることができます。

一方で不動産投資用のアパート建築は、知識の浅いまま取り組んで失敗すると、挽回するのに多大な労力と時間を必要とします。管理費などの維持費で出費がかさみます。不勉強のままで取り組んでも、多額の借金を抱えている割に儲からない物件ができてしまうだけです。

利回り

賃貸併用住宅は自宅の床面積が50%以上という制限がありますし、自宅部分の住宅設備は純粋な収益性の観点だけで作ることはないため、どうしても利回りは普通の不動産投資用の物件よりも下がります。地価の安い地域ほど賃貸併用住宅と投資用物件の利回りの差が開いていきます。

これを逆手に取ると、地価が高く資産性のある土地を手に入れる手段としては賃貸併用住宅はぴったりの仕組みです。利回りという収益性ではなく、低い借入金利を利用した不動産による資産形成として捉えることが必要だということです。

借入金利

マイナス金利導入の影響もあり、最近の住宅ローン金利は信じられないほど低い金利に設定されています。全期間固定金利でも1%前後という水準ですし、一定期間固定金利では三井住友信託銀行が10年固定で0.4%という破格の条件でローンを貸してくれます。

ネット銀行の住宅ローンは破格の低さの金利が出揃っており、住信SBIネット銀行、ソニー銀行、じぶん銀行などは変動金利で0.5%を切っています。

賃貸経営の実績がない素人がアパートローンを借りようとしても、この金利の低さで融資してくれる銀行や金融機関はありません。新築アパートで世帯年収が多い場合でも、1.5%~の金利で借り入れるのがやっとです。普通のサラリーマンでは金利2%台となることがほとんどでしょう。

最大借入期間

借入期間が短いと手持ち資金に余裕がないため、突発的な出費で金利の高いローンを組むことになったり、最悪の場合は破綻してしまう可能性があります。住宅ローンの場合は35年とかなり長期での返済が可能なので手元に資金を残しやすく、リスクに備えたり繰り上げ返済をしたりと、金銭的な自由と安全性を確保することができます。

ちなみに借入期間が長いと支払い利息も増えるじゃないか、という指摘は全くの検討はずれです。これだけ金利が低いと、住宅ローン金利よりも利回りの高い金融商品や投資用物件を購入することで、金利と利回りの差分だけ利益を得られます。

つまりローンを目一杯借りて出来る限り長期間で返済する間に、手持ち資金を資産運用することで利益を増やすことができるのです。さらに住宅ローン控除もあるため、住宅ローン金利1%以下で借り入れした人は最初の10年間は借入残高を減らさないようにするほうが得をします。

管理しやすさ

自宅と同じ敷地に賃貸住宅があれば頻繁に状況を確認することができます。建物周辺にゴミや落ち葉があればすぐに気付いて掃除できますし、細かい建物の不具合にもすぐに気付いて安く修繕することができます。

空室になった部屋の募集の時にも大家自身が案内もできますし、賃貸募集をしてくれる賃貸仲介業者めぐりなども簡単です。入居者と近隣住民のトラブルなどが起こってもすぐに対処が可能です。賃貸併用住宅では管理会社への委託は不要で、サラリーマンでも自主管理で十分に運営できます。

運営維持費

賃貸併用住宅は自主管理にすることで管理費が不要になります。さらに建物外部の共有灯が切れた場合など、管理会社委託だと業者が動くので数千円の出費ですが、自分で電球を変えれば数百円です。こうした細かな修繕費用の積み重ねは意外と大きな金額の差になります。

運営維持費が少なければ同じ家賃からより多くの利益を得ることもできますから、実質的な利回りがアップすることになります。

賃貸経営の経験

自主管理をオススメするのは管理費を浮かせるだけではありません。賃貸経営の経験も積むことができるようになる点がとても大きなメリットだと私は考えています。短時間でキレイになる清掃のやり方、住宅設備の細かな修理、賃貸住宅を探している人からみた建物のイメージ改善など、現場にいる(住んでいる)からこそ分かる賃貸経営の経験を積み重ねることができるのです。

投資用のアパートを所有しているだけでは現場に足を運ぶ機会が少ないので、自分で積極的に賃貸経営に関与しないと経験を積むチャンスはほとんどありません。

自分の住む場所

住宅ローンはなぜ金利が安いかと言うと、自分の住む場所を確保するためなら一生懸命に働くために、ローン返済を滞納する可能性が低いという統計的な数値が出ているからです。自宅は生活の中心なので、しっかりとローンを返そうというモチベーションが湧いてきます。

裏を返せば自宅として使用することが住宅ローンを借り入れるための条件です。賃貸併用住宅を建てたら、転勤や介護で親と同居など、キチンとした理由がない限りは賃貸住宅として貸し出すことはルール違反となり、住宅ローンの一括返済を迫られても仕方がない状況になってしまいます。

自宅を変える自由がなくなる点は賃貸併用住宅のデメリットとなります。

家族との関わり

賃貸併用住宅はマイホームですから、結婚している場合は奥さんや旦那さんと相談しながら土地を探したり建築プランを考えたりします。子供が大きくなっている家族ならば、夫婦に加えて子供も一緒に考えるので、家族と関わる時間が自然と増えることになります。

一方で投資用物件は夫婦のどちらか片方だけが熱心に動いている場合が多く、不動産会社との打合せや現地調査に出掛けてしまえば家族と触れ合う時間は減ってしまいます。夫婦や親・子供と一緒に活動できる場合は良いのですが、そう上手くはいかない場合がほとんどです。

所得税

賃貸併用住宅は建物の半分を自宅として使用しますので、家賃収入が多くない分だけ住居費としての出費も少なく支払い利息も少ないので、家計全体の収支で見ると実質的にはそれなりのプラス収支となります。しかも表面的な収入はそんなに増えないため、支払う所得税は少し増える程度です。

投資用物件のアパート一棟を買ってしまえば多額の家賃収入がある代わりに、表面的な収入が一気に増えてしまいますから、支出を差し引いた所得の増加分が多くなり、かなり所得税の支払い金額が増えてしまいます。それでいて自宅の住居費は全く別で支払う必要がありますから、家計全体の収支としては収入が多い割に手元にはお金があまり残らないことになります。


賃貸併用住宅は初心者にはオススメしたい不動産投資法


私の場合は2007年に中古ワンルームマンションから不動産投資を始めて、2015年に賃貸併用住宅の有利さに気が付いて自宅を建てるまでに8年間の期間が必要でしたが、これほど勉強になり、かつ資産性のある不動産を手に入れることができるなら最初からやっておけば良かったと後悔しています。

不動産投資のプロには物足りない投資法ですが、初心者にはとてもメリットの大きい不動産投資の手段です。これから賃貸併用住宅を建てようと考えているならば、本当にオススメですので早く専門業者に問い合わせをしたりハウスメーカーに相談するなりして、取得に向けた一歩を踏み出して頂きたいと思います。