賃貸併用住宅を建てられる土地の条件と探し方



賃貸併用住宅は普通の一戸建てとは違うため、土地の探し方や検討方法も当然違ってきます。法令上の問題で賃貸併用住宅を建築できない土地は多くありますし、賃貸経営の観点として建ててはいけない土地もあります。

今回はそんな賃貸併用住宅の土地探しに必要な基礎知識を確認していきたいと思います。


法令による規制や権利関係の影響で建築できない場合


土地を購入する時には必ず不動産会社による土地の説明があります。建物を建てられる土地なのか、どんな制限があるのか、下水管やガス管などとの接続状況、隣地との境界に関する問題、二項道路に接するためセットバックの必要性など、多様な観点によるチェックと説明が行われます。

賃貸併用住宅を建てるという目的を不動産会社の担当者に伝えておけば、いざ土地を購入してから建てられないということは滅多にありませんが、土地探しの中で不要な情報に時間を取られないためにも、賃貸併用住宅を建てられない土地にはどんな種類のものがあるのか確認していきましょう。

再建築不可の土地


これは不動産や土地について知識がない人でもすぐに買ってはいけない土地だということが分かります。再建築不可の土地は建築可能な土地に比べて半値ほどになっており、非常に安い価格が付けられていますが、それだけの価値だという事です。

ちなみになぜ建物を建築できないような土地が売買されているのかというと、駐車場や資材置き場として利用したり、既存の建物をリフォームしながら利用したり、隣接する再建築可能な土地を将来買収できれば一体化して建築可能な土地となる、など様々な理由がありますが、賃貸併用住宅を検討している私たちにとっては不要な土地です。

ごく稀な例ですが、再建築不可の土地の上に大きな一戸建てや、小規模なアパートが建っている場合、リフォームを行うことによって賃貸併用住宅として転用可能な場合もあります。ただし土地に資産価値がないため、もしリフォームにより賃貸併用住宅として活用できる場合でも、再建築不可の土地は購入しないことをオススメします。

借地権の土地で地主の許可を得られない土地


再建築不可のように安い価格で売買されているのが借地権の土地です。所有権の土地は建築基準法などの法令の範囲内で自分の自由に建物を建てることができますが、借地権の土地の場合は地主に許可を得られた建物のみ、建築することが可能です。

しかも地主に新築やリフォームを行う許可を取りに行くたびに、契約書によって決められた承諾料をその都度ごとに支払う必要があります。また当然ですが毎月の地代も支払う必要がありますし、もし借地権を売却する時には許可を得て譲渡承諾料を支払ったうえで売却する必要があります。

その代わり所有権に比べて相場の7割ほどの価格で購入することが可能です。毎月支払う地代も賃貸併用住宅ならば家賃収入で支払うことができます。土地の取得金額が安いため、賃貸併用住宅を建てた時のシミュレーションをするととても儲かりそうな気持ちになります。

ところが地主の承諾が毎回必要だというのはとても厳しい制限です。多くの地主は借地権者以外の人物が敷地に出入りすることになる賃貸併用住宅は嫌だと思う人も多いですし、そもそも集合住宅の建築を許可していない地主もいます。さらに賃貸併用住宅を建てることができても、できた後で「これは許可していない」「こんな風に建てるとは聞いていない」など、キッチリと承諾を得ないままに建築を進めてしまうと問題を起こすことになります。

さらに地主との関係だけではなく銀行もお金を貸してくれないため、そもそもの賃貸併用住宅の魅力である住宅ローンを利用した資産形成ができません。銀行にとって土地の借地権というのは担保にすることができないため、お金を貸してもし貸出先の人が失敗した場合に、ちゃんとお金を回収できる見込みが低くなってしまうのです。

借地権に関する多くのトラブルへの対処法を知る人に助けてもらえる場合でも、住宅ローンを借りることができなかったり、高い金利の住宅ローンを利用することになってしまうため、賃貸併用住宅には借地権の土地も避けたほうがよいです。

敷地延長の土地


敷地延長の土地は旗竿地や路地上敷地と呼ばれることもあります。土地が道路に接している部分は非常に狭く路地状になっており、通路の奥まで進むと敷地が広がっているような形状の土地です。敷地延長の土地の場合は自治体によって賃貸併用住宅を建てられるかどうかが変わります。

敷地延長の土地の場合、そもそも路地部分の幅が2メートル以上ないと再建築不可の土地となり、建物を建てることができません。さらに自治体によって法令による制限が存在するため、思ったような建物を自由に建てることができません。

例えば東京都建築安全条例には路地上敷地での共同住宅の建築について以下のような制限があります。

「階数が3以下、延べ面積が200平米以下、住戸数が12以下、路地の長さが20メートル以下である共同住宅なら建築してもよい」

さらに有名な例として、東京都世田谷区では「路地上敷地に共同住宅を建築してはならない」という制限があります。ただし外階段の付いた2階建てのアパートはダメでも、玄関が全て1階にあり内階段となっている長屋形式の建物ならば建築できるといった、細かな制限の違いがあります。

敷地延長の土地は同じ面積の整形地に比べて7割ほどの価格で購入できるため安く感じますが、路地部分には建物を建てることができませんし、奥にある敷地は周囲を建物に囲まれているため日当たりや風通しが悪く、住環境が良いとは言えません。

多くの建築士は敷地延長の土地に対応した賃貸併用住宅のプランを考えてくれますが、法令上の制限で大きな建物を建てられなかったり、斜線制限と呼ばれる建物の高さを規制する法令のために十分な高さを確保できなかったりと、色々と制限が多いです。

その代わり安く購入できるので、上手く建築プランが当てはまるならば購入してもよい土地です。ただし自治体の制限によって、そもそも共同住宅や集合住宅を建築できない場合がありますので、不動産会社や建築士によく確認してから話を進めるようにして下さい。

43条1項ただし書き道路に接する土地


土地の接する道路が、道路ではなく単なる通路であったり、幹線道路から土地までの間に極端に狭い箇所があったり、遊歩道に接している状態であったりして、建物を新築するための建築基準法(接道義務)を満たしていない土地があります。

このような土地の場合、普通は再建築不可となりますが、中には申請をして許可を得ることで建物を再建築できる土地もあります。それが「43条(1項)ただし書き道路」と呼ばれる通路に接する土地です。

こうした43条1項ただし書き道路の場合、「法43条許可申請」と呼ばれる申請書を出すことにより、建築審査会の許可を得られれば建物を新築することができます。ただし新築できる建物には様々な制限が加わります。

私が購入を検討したことのある43条1項ただし書き道路の土地では、家を新築してもよいものの次のような制限がありました。

  • 一戸建てのみ建築可能。アパート、賃貸併用住宅、二世帯住宅はNG
  • 2階建てのみOK。3階建て、地下室はNG
  • 高高さ8メートル、軒高7メートル以下。実質的にロフトはNG
  • ・通路(道路)の入口が幅2メートルちょっとと極端に狭くなる箇所があり、軽自動車でギリギリ通行可能な幅


立地は人気のある沿線の急行停車駅で都心のターミナル駅まで数分で行けて駅徒歩7分、通常の土地相場の6割程度の価格という破格の条件でしたが、厳しい建築制限や車での通行がほとんど不可能に近い通路のせいで、一年以上経っても売れ残っていました。

賃貸併用住宅を建てることができないので見送りましたが、普通の一戸建てで、しかも自動車ではなくバイクか自転車だけ利用する世帯にとっては大安売りの土地となります。ただし資産性は低いため、資産形成という観点でも選ぶのは避けたほうが良い土地となります。

賃貸経営の観点で建築してはいけない場合


賃貸需要が少ない立地


賃貸併用住宅の最大のメリットは家賃収入があることですから、家賃収入が得られない土地、つまり賃貸経営が成り立たないような立地では建ててはいません。これは当然のことなので気付く人も多いと思いますが、今だけではなく、将来的に賃貸需要が大きく減っていくような土地にも気付く必要があります。

具体的には人口が早く減少する土地などがそうです。

収益性の低すぎる土地


例え賃貸の入居がいる地域であっても、競合が多すぎたり、需給バランスが崩れて家賃相場が不当に安くなっている土地も賃貸併用住宅を建ててはいません。福岡の一部地域では家賃相場が崩れてしまい、わずかな家賃収入が入ってきても建物の維持や税金の支払いで精一杯というのは有名な話です。

賃貸併用住宅を検討する時には、その土地の価格や建築プランだけではなく、賃貸需要や家賃相場を調べた上で、収支が適正な状態かを必ず計算してください。

賃貸部分の確保が難しい土地


広い土地でも風致地区と呼ばれる制限のある土地では、土地の建蔽率や容積率が非常に少ないために、土地に比べて小さな建物しか建てられないことがあります。賃貸併用住宅は自宅と賃貸住宅が組み合わさった建物ですから、数戸の建物でも普通の一戸建て以上の大きさにはなります。

そのため風致地区のような敷地に余裕を持たせて家を建てる必要のある土地には、賃貸部分の確保が難しい場合が多く、賃貸併用住宅が成り立たない土地が多いです。同じく都市計画法による用途地域の一種である第一種低層住居専用地域も、暮らしやすい環境ではあるものの、建物の大きさを確保するのが難しいので賃貸併用住宅が成り立ちにくい土地です。

アパート建築できる土地が周囲に多くある立地


これは将来的に収益性の低い土地になる立地です。駐車場になっている土地や、更地のまま放置されている土地、庭の広い平屋の土地などが多数ある地域の場合、アパートやマンションなどの集合住宅ができると一気に競合となる賃貸住宅が増え、新しい建物に賃貸需要を奪われてしまう可能性があります。

なぜ賃貸需要を食い合うような土地にアパートやマンションが建築されるかというと、相続税対策のため賃貸経営の収支を度外視した考えで参入してきたり、あまり不動産や賃貸経営の知識がない人がディベロッパーや工務店の営業マンに騙されるような形で賃貸住宅を新築してしまうからです。

一方で都心の駅前のように、小さな土地にゴミゴミと建物が混み合っているような土地の場合、新しく建物を建てられるような土地はほとんど残っていませんから、今の賃貸相場や需給関係が大きく崩れる心配はあまりありません。

将来的に賃貸経営の競合が増えるかどうか、という観点で土地のある立地と周辺環境を観察する必要があります。

どうやって土地を探すのが正解か


土地には多くのチェックポイントがあり、素人が生半可な知識のまま購入しても、たいした収益も得られない、資産性の低い土地を選んでしまいかねません。人気沿線の駅や始発駅・乗り換え駅から徒歩5分以内、というような土地なら間違いはありませんが、地価が高いために住宅ローンの借入可能額が足りなかったり、購入競争に勝てなかったりすることが多いです。

そのため賃貸併用住宅を建てたいと思ったら、まずは賃貸併用住宅を扱う不動産会社やハウスメーカーに相談するのが第一歩となります。そういった企業には賃貸併用住宅にピッタリのn土地情報が自然と集まりますし、銀行への住宅ローン借入打診も助けてもらえる場合がほとんどです。

最近では賃貸併用住宅を専門とした不動産会社などもあり、意外にも相談できる人は多く存在します。ウェブで情報収集をするだけではなく、相談できそうな企業やプロを見つけることができたら、問い合わせをして実際に会ってみることが大切です。何か行動を起こせば、必ず何か結果が得られます。小さな一歩から行動を始めることで、賃貸併用住宅というゴールが見えてきます。いますぐ何か行動をしてみましょう!