住宅ローンの借り入れ先選び これを知らないと損します


賃貸併用住宅を新築で建てるときに重要な要素は3つあります。土地探し、建築プラン、そして最後に住宅ローンです。

土地があって賃貸併用住宅を建てる場合は手持ち資金だけで建築できてしまうかもしれませんが、サラリーマンや自営業者が資産形成のために土地購入から始める場合は住宅ローンの借り入れが必須ですし、土地所有の場合でも建築費用の全額現金で持っている場合も少ないでしょう。

つまり賃貸併用住宅を建てたいと思う人のほとんどは住宅ローンのお世話になるわけです。しかし賃貸併用住宅を建てようと思った時、土地や建物のことは気にする人は多いですが、資金調達の手段である住宅ローンについて深く考えている人は多くありません。ところが、単に融資をしてくれる銀行から借りれば良いという考えでは損をすることになります。

そこで今回は住宅ローンの借り入れ先の銀行・金融機関について、どんな基準や考え方で選べばよいのかを見ていきましょう。


金利は住宅ローンの比較において最大の要素だけれど…


住宅ローンの比較をするとき、まず真っ先に検討されるのは金利です。金利が少なければ同じ物件を購入しても毎月のローン返済額が減りますし、借り入れた金額に対する総支払利息が減るからです。

三井住友信託銀行 住宅ローン案内画面
三井住友信託銀行の住宅ローン案内画面。
変動金利で0.6%、5年固定金利で0.35%、10年固定金利で0.4%の
金利案内をしていることが分かります。

ところが最近ではマイナス金利の影響のため、どの銀行や金融機関でも非常に低金利で住宅ローンを借り入れることができるようになっています。2016年7月時点では、三井住友信託銀行の住宅ローン金利を見ると、5年固定金利で0.35%、10年固定金利で0.4%という破格の金利条件になっています。変動金利も0.6%と異常な低金利です。

全期間固定金利で有名なフラット35の融資実行件数ナンバーワンのARUHI(アルヒ)の金利を調べても、最大20年の固定金利が0.85%、最大35年の固定金利が0.93%とものすごい低金利です。ただしこの金利は住宅ローンの借り入れ比率が9割以下の場合ですが、ほとんどの人は頭金を用意していますから、この超低金利で住宅ローンを借り入れることができるのです。

他行もほとんどが1%以下の住宅ローン金利を提示しているため、金利差はほとんど無くなってきているため、月々のローン返済額はほとんど差がありませんし、35年間の総支払利息で考えてもあまり差はありません。

  • 借入金額4000万円、借入期間35年、元利均等返済、金利0.85%の場合 →総支払利息 約626万円
  • 借入金額4000万円、借入期間35年、元利均等返済、金利0.8%の場合 →総支払利息 約587万円
金利0.85%と0.8%での総支払利息の差:約39万円

39万円という金額は大きなものですが、35年間×12カ月=420カ月の期間でみると、毎月の差額はたったの900円です。これが0.85%と0.4%だと総額340万円の差になり毎月8000円もの差ができますが、金利が0.5%変わる程度ではほとんど影響はありません。

住宅ローンの比較について考えておきたい要素


以前の記事で個人が住宅ローンの借り入れができる10種類の銀行・金融機関についての紹介記事を書きました。


この記事でご紹介した銀行・金融機関を住宅ローンの借り入れ先として比較してみます。当然金利が再優先の項目となりますが、実は金利以外にも多数の検討要素があります。住宅ローンの借入先金融機関を比較表の形にしたものが下記の表です。

銀行・金融機関の種類 金利 借入額 柔軟さ 支店数 対応地域 サービス 信用蓄積
メガバンク・都市銀行
ネットバンク・ネット銀行 × - ×
地方銀行
信用金庫
ろうきん(労働金庫)
ノンバンク ×
信託銀行
信用組合
JAバンク(農業協同組合)
公的機関(公的ローン) × × × × × ×

この表を見ると分かりますが、金利以外にも多くの比較検討項目はあります。繰り上げ返済の手数料や保証料などもありますが雑多になりすぎるため、長期的に影響のある項目を選抜して比較表に記載しています。

金利の低さ

金利は低ければ低いほど良いと単純に考えてしまうとネットバンクが最も有利なように見えますが、必要な借入金額まで融資額が伸びなかったり、と他の要素が意外にも影響してきます。ただし同じ条件ならば確実に金利が低いローンを選ぶべきです。

借入可能額

賃貸併用住宅の場合、建物の規模が大きいために借入可能額が足りなくなることが多いです。住宅ローンは自宅を購入するために想定されたものなので、単純に年収×7倍の金額までしか借りられないことが多いです。とはいえ様々な条件を考慮して年収7倍の上限を超えて融資してくれる銀行や金融機関も多く存在します。

柔軟さ

組織が大きくなればなるほどルールは厳格に適用されるため、メガバンクではなかなか柔軟な住宅ローンの組み立てというのが難しいです。また運用コストを最小限にすることで提供金利を低く抑えているネットバンクも柔軟な対応をする余裕はありません。小さな銀行や金融機関ほど柔軟な対応をしてくれることが多いです。

支店数

支店の数は通帳記帳やローン返済額の入金など、住宅ローンに関する手続きの便利さに直結します。わずかな金利を浮かせるために、自宅から遠い場所にしか支店がない銀行や金融機関で借り入れをして、毎月ローン返済額を入金に行くなどという苦労はしたくないものです。住宅ローンを借りると金融機関とのお付き合いが始まるため、リフォームローンなどの相談に支店があるのは便利です。


対応地域

地方銀行や信用金庫などでは営業エリアが決まっているため、賃貸併用住宅を建てる地域が取扱い対象となっている銀行や金融機関を選ばなければなりません。特に信用金庫や信用組合は営業対象地域が狭いため、少し離れた場所の物件では対応できなくなってしまうことがあるので要注意です。

サービス

住宅ローンの借り入れ以外のサービス内容も確認しておきたい項目です。住宅ローンの返済をする口座はお金の出入りの中心となりやすいため、投資信託や外貨預金などの他の資産運用の口座としても活用したりしやすいです。

信用の蓄積

実は私が一番大事だと思っている項目が、この信用の蓄積です。住宅ローンの返済をキッチリと行うことは銀行や金融機関から見て優良な顧客となる最大の要素です。ただしメガバンクなどでは普通のサラリーマンや自営業者では大金持ちと比較され、同じ返済履歴でも信用の蓄積度合は小さな金融機関とは異なります。

できれば地元の銀行・金融機関から借り入れて信用を作り、将来を通してのお付き合いができるようにすることで、ピンチやチャンスに融資を受けるという選択肢を手に入れることができるようになります。

住宅ローンの相談をする時の裏技


実は賃貸併用住宅で住宅ローンの借入をする場合、賃貸経営をすることになるのである程度の事業性が発生するため、銀行や金融機関への話の持って行き方で借入金利や借入可能額が大きく変わることがあります。

銀行や金融機関への上手な話の持ちかけ方に詳しいのは、やはり不動産会社です。特に賃貸併用住宅を専門に扱う部署がある場合、銀行とのコネクションがあったり、賃貸併用住宅の融資実績がある担当者を知っていたり、用意しておくと借入に有利な情報・書面を把握していたりします。

私の場合も賃貸併用住宅のコンサルティング実績が豊富な不動産会社の紹介のおかげで、地方銀行から破格の条件で住宅ローンを借り入れることができました。

銀行からの視点で考えれば、実績がありお互いの素性を良く知る不動産会社のほうが、飛び込みで相談に来る個人よりもよほど信用できます。特に賃貸経営という事業性のあるローンの貸出を行うのですから、やはり実績と付き合いのある不動産会社がサポートする案件のほうが良い条件での融資を行うことを行内でも説明しやすいのです。

銀行や金融機関へ相談に行く前に、賃貸併用住宅の実績がある不動産会社に相談をしてみることが、有利な住宅ローンを借り入れるための近道となるのは間違いありません。