実際に検討した賃貸併用住宅の土地と間取り その3

現在は賃貸併用住宅の建築を進めている私ですが、過去2年弱の間にずっと賃貸併用住宅用の土地購入や、中古の賃貸併用住宅の取得を検討してきました。その間には10件以上の土地や建物について購入を考えてきました。

そこで具体的な賃貸併用住宅の実例として、私が実体験してきた物件の情報と購入に至らなかった理由を添えて1件ずつ解説をしていきます。あなたの賃貸併用住宅の取得にお役立て頂けると嬉しいです。

賃貸併用住宅の土地候補7件目


住所:東京都世田谷区
立地:東急線沿線 普通停車駅 徒歩3分
面積:80平米
用途:第一種中高層住居専用地域
権利:所有権
建ぺい率:60%
容積率:200%
価格:5000万円
形状:南北に少し長い長方形
接道:北側6m公道、間口:7m
賃貸併用住宅プラン:木造3階建ての長屋タイプ
[1階の間取り]シェアハウスLDK+シェアハウス個室1戸の合計47平米
[2階の間取り]シェアハウス個室6戸の合計47平米
[3階の間取り]1LDK47平米(自宅)

賃貸併用住宅を探し始めてからかなり時間も経ってくると、土地探しのやり方もだいぶ慣れてきます。athomeやSUUMO、HOME'Sといったありとあらゆる不動産情報サイトのチェックや、各不動産会社の新着土地情報メールの登録をほぼ網羅するほどに情報収集の範囲を広げ、毎日こまめにチェックするようになっていました。

そんな中、大手不動産会社の新着情報としてメールが届いた土地が7件目の土地です。土地情報自体は深夜に登録され、翌朝に条件に当てはまる新着情報メールが配信されたのに私が気付き、その朝のうちに電話をして、見つけた3時間後には現地を見に行きました。問合せをした不動産会社の担当者が驚くぐらいのスピード感でした。

土地の大きさ、形、価格、建てられる建物の大きさ、立地、周辺環境ともにほぼ理想的な土地です。木造3階建てで1フロア50平米弱と建物がかなり大きいうえ、スルガ銀行の住宅ローンなら自宅部分の床面積は1/3でOKなので、2/3を賃貸住宅として貸し出せます。

駅徒歩3分という立地を活かしてシェアハウスにすれば、広いリビングを確保しても5.5万円×7部屋=38.5万円の月間家賃収入が見込めます。これならば住宅ローンでも3.5%以と金利が高いスルガ銀行でも十分にプラスの収支にすることが可能です。

ところがこの土地、大きな問題が2つありました。実は検討していた建物を建てるには容積率が200%ないといけないのですが、この土地の前面道路は歩道と道路を合わせて6mなので、歩道部分の道路認定を受ける必要がありました。

この歩道の道路認定は自分の土地の部分だけなら2ヶ月ほどで承認が下りるのですが、東側隣地の土地も同じように歩道の道路認定をしてもらわないと容積率が200%にならずに160%にしかならないという条件です。交渉が上手くいけば良いですが、上手くいく保証はありませんし、歩道の道路認定だけでも2ヶ月はかかるので時間の無駄も大きいです。

さらにもう一つ問題として、建築費用が総額1億超えになるという問題がありました。建物が大きいため建築総額が大きくなるのは当然ですし、木造3階建ては2階建てと違って構造計算書の作成が必要だったりと手間もお金もかかるため坪単価でみても割高になってしまうのです。

細かい問題としては、上水道が前面道路から引き込まれておらず、東側隣地の下を通っていることも分かりました。この場合、上水道を引き込む部分の工事からやり直す必要があるために工事代金がはね上がります。

1億円超のお金を普通のサラリーマンである私にはとても用意できません。価値の高い鉄筋コンクリート造のマンション一棟ならばアパートローンで借りられる可能性はありますが、今回は賃貸併用住宅なので住宅ローンです。必死で頭金をかき集めても借りられる住宅ローンを考えると買うことのできる金額を大きく上回ってしまいます。

土地としては素晴らしかったのですが、隣地との交渉の不確実さや建築費用の総額が高すぎるため泣く泣く購入を取りやめました。

賃貸併用住宅の土地候補8件目


住所:東京都世田谷区
立地:東急人気路線 急行停車駅 徒歩8分
面積:76平米(セットバック後)
用途:第一種中高層住居専用地域
権利:所有権
建ぺい率:60%
容積率:160%
価格:5000万円
形状:ほぼ正方形
接道:南側2.7m私道、間口:8m
賃貸併用住宅プラン:木造2階建ての長屋タイプ
[1階の間取り]ワンルーム17平米+ロフト8平米付き×2戸
[2階の間取り]1LDK33平米・ロフト16平米付き(自宅)

8件目の土地は7件目を買おうと買い付け書類を提出した後に、担当者さんがもう一つ賃貸併用住宅の条件に当てはまる土地があると言って偶然紹介したくれた土地です。人気のある駅から徒歩8分と競争力のある立地で、土地の形も素晴らしいです。

紹介されたその場にすぐに買付け証明書を書き、一週間だけ土地を押さえることができました。急いで設計をお願いしている会社に連絡を取り、木造2階建ての賃貸併用住宅プランを書いてもらいました。

ところがこの土地、南側道路であるために北側斜線制限の影響を大きく受けるため、2階の床面積を33平米しか確保できないことがわかりました。1階の賃貸住宅部分も17平米のワンルームが2戸なので、ロフト付きだとは言っても競争力のある魅力的な賃貸住宅とはなりません。

土地の形や価格はちょうど良いものの、建てられる建物の魅力がなければ意味がありません。見込める家賃収入は良くて9万円×2部屋=18万円です。しかも新築のうちは借り手がいても、築年数が経ってくれば小さな17平米のワンルームなど借りる人は減っていき、家賃収入も下がっていくのは明白です。

さらに悪いことに土地の接している道路は私道のため、念のため私道利用の承諾書を作ろうと関係者に捺印を依頼して回ったものの、2世帯だけ捺印を渋ったために承諾書が完成しなかったという経緯もありました。

この土地も残念ながら契約前に見送りとなりました。良い土地を見つけても自分の希望する条件と多くの部分が合致しないと購入まで進みません。本当に納得のいく賃貸併用住宅を建てるのは大変ですが、無料で自宅に住めるというメリットと、住んでいるだけで資産を築いていけるという魅力が自分を突き動かしていました。

まだまだ実体験の土地検討と中古物件検討のお話は続きます。どんな動きをして物件情報を見つけ、どんな賃貸併用住宅の建物を検討したのか、具体的な内容で紹介していきます。お楽しみに。