最後は木造ではない建物の賃貸併用住宅を検討した土地と、中古住宅で賃貸併用住宅を検討した実例をご紹介していきます。賃貸併用住宅は住宅ローンさえ利用できれば色々な取得方法があるという事がよくわかる事例です。
賃貸併用住宅の土地候補17件目
住所:東京都世田谷区
立地:東急人気路線 急行停車駅 徒歩4分
面積:37平米
用途:近隣商業地域
権利:所有権
建ぺい率:80%
容積率:300%
価格:3400万円
形状:南北に長い長方形
接道:南西側11m公道、間口:3.6m
賃貸併用住宅プラン:鉄骨造4階建て小規模ビル
[1階の間取り]貸店舗24平米
[2階の間取り]貸店舗24平米
[3階の間取り]自宅水回り27平米
[4階の間取り]自宅1LDK27平米
17件目の土地は建ぺい率80%・容積率300%と4階建ての建物が建つ土地です。人通りの多い商店街沿いの土地で、前面道路の幅は10メートル以上あります。住居用の賃貸併用住宅だけではなく、テナント貸しができる賃貸併用住宅を建てられる立地です。
ただし土地は37平米とかなり狭いです。さらに間口が3.6メートルしかないので、木造の長屋タイプで玄関を2つ作ることはできません。鉄骨造で4階建ての建物を作り、1階と2階を貸店舗としてテナントに賃貸をして、3階と4階を自宅とする賃貸併用住宅になります。
人気の駅で、しかも商店街の大通り沿いなので高いテナント収入が見込めます。最低でも15万円では貸せるので、15万円×2店舗=30万円が貸店舗収入として月々見込めます。小さなビルですが土地は3400万円と安く、建築費用の高騰を織り込んでも鉄骨造で3500万円あれば建築できそうです。
エレベーターは維持費が異常にかかるので、階段のみとなり少し大変ですが、総費用に対してのテナント収入が高くしかも住宅ローンが使えるので、これを買わない手はありません。すぐに購入しようと問合せをしました。
ところが情報が出て1日経った後だったのですが、すでに現金での購入者が現れたとのことで一瞬のうちに販売終了となってしまいました。賃貸住宅に比べて貸店舗の賃料の高さに驚くと同時に、商業地の賃貸併用住宅の可能性も探るようになった土地でした。
中古の賃貸併用住宅候補1件目
住所:東京都世田谷区
立地:東急人気路線 急行停車駅 徒歩6分
土地:99平米(セットバック後93平米)
建物:105平米
用途:第一種住居地域
権利:借地権
建ぺい率:60%
容積率:160%
価格:3400万円
形状:ほぼ正方形
接道:東側2.2m私道、間口:8m
中古住宅:木造2階建て2LDK
築年:1989年築
[1階の間取り]2部屋+水回り51平米
[2階の間取り]26畳LDK 54平米+外階段と2階勝手口あり
リフォーム後:シェアハウスの賃貸併用住宅
[1階の間取り]シェアハウス4部屋51平米
[2階の間取り]1LDK自宅54平米
中古住宅のリフォームで一番まともに検討できたのがこの人気駅徒歩6分の借地の大型の一戸建てです。実はこの物件、一度4500万円の借地権付き戸建てとして販売されていたのですが2ヶ月ほど売れず、価格を一気に下げて再び販売された物件でした。
木造2階建てでワンフロア50平米以上になっているのでリフォームもやりやすく、築年数も25年ほどでそこまで古くありません。住宅設備関連は全て入れ替えが必要でしょうが、フルリフォームするのが前提なので建物さえしっかりしていれば問題ありません。
人気駅の徒歩6分ならシェアハウスが十分に運用できます。中古物件のリフォームだと部屋割りが難しいのですが、ほぼ正方形でしかも木造なので簡単に4部屋を作ることができます。1500万円かけてフルリフォームしたとしても総額5000万円です。
この立地ならばシェアハウスの個室1つで6万円はもらえますので、6万円×4部屋=24万円が月の家賃収入です。借地なので毎月の地代2.5万円を払っても21.5万円。5000万円を全額住宅ローンで借り入れても月間返済額は14万円なので、7万円も手元に残ります。ものすごく投資効率の高い物件です。
ただし私が3400万円に値引きされていたのに気付いたのは、値引き後1週間経ってからでした。すでに契約の段取りまで終わっており、全く買うチャンスなく終わってしまいました。日々の情報収集の大切さを実感することになった物件でした。
中古の賃貸併用住宅候補2件目
住所:東京都世田谷区
立地:東急沿線 普通停車駅 徒歩5分
土地:136平米
建物:155平米
用途:第一種低層住居専用地域
権利:借地権
建ぺい率:60%
容積率:150%
価格:4400万円
形状:南北に少し長い長方形
接道:2面接道、南側3.6m公道・間口10m、北側3.6m公道・間口10m
中古住宅:木造2階建て4LDK+賃貸ワンルーム3戸
築年:1994年築
[1階の間取り]2LDK+水回り60平米(自宅1階)+賃貸ワンルーム18平米×2戸
[2階の間取り]2部屋+トイレ+バルコニー(自宅2階)+賃貸ワンルーム18平米×1戸
最後のこの中古住宅は、中古の賃貸併用住宅としてほぼ完ぺきな広さと賃貸住宅を備えた物件です。築年数も20年なので建物の傷みは気にする必要がなく、内装や設備を新品にすれば十分な物件でした。
借地権とはいえ土地が40坪以上もあり、建物は47坪もあります。道路にも南北の2方向で接しているので新築の賃貸併用住宅を建て直すならば、全く別の入口にしてしまう事もできます。まさに理想的な物件です。
でもなぜか何か月も売れ残り、自宅部分はおろか賃貸の3部屋も全て空室となって販売されていました。あまりの安さと全戸空室という異常な雰囲気の理由は借地権のトラブルが背景にありました。
実はこの建物の売主は、地主に黙って賃貸併用住宅を建ててしまったようなのです。そのことに気が付いた地主は売主を追い出すと同時に賃貸住宅に住んでいた人たちにも退去させ、強制的に土地を販売することになったのです。
当然新しい買い手も賃貸併用住宅は認めず、大型の一戸建てか二世帯住宅のみ許可するという条件になっていました。残念ながら賃貸併用住宅を建てることができない土地には用がありません。すぐに検討を見送ることになった惜しい物件でした。