実際に検討した賃貸併用住宅の土地と間取り その5

10件以上の賃貸併用住宅用の土地を検討してきましたが、やはり賃貸併用住宅は普通に賃貸住宅を建てるのと同じですので、30坪以下の小さい土地の場合は整形地でないと収益性の高い建物を建てることができません。玄関の数も多くなりますので、土地が道路に接している広さ、つまり間口もある程度広くなっている必要があります。

一方で賃貸併用住宅は収益性の高さを追求する観点も必要ですので、坪単価の安い路地状敷地(旗ざお地)などの変形地も検討しておきたいところです。ただ変形地の場合は30坪以上の広さがないとまともな大きさの建物を建てることができません。

さらに路地状敷地の場合、道路と2m以上接していれば建物を建てることができますが、各自治体の条例によって建てられる建物の種類が制限されるので注意が必要です。例えば世田谷区は路地状敷地に共同住宅を建てることはダメですが、長屋ならば建てることが可能です。

他にも賃貸併用住宅が建てられないような土地や注意点はたくさんありますので、私が体験してきた土地探しの経験を元に、どんな土地はダメなのかについてお伝えしていきます。

賃貸併用住宅の土地候補11件目


住所:東京都世田谷区
立地:東急人気路線 急行停車駅 徒歩9分
面積:82平米(セットバック後)
用途:第一種住居地域
権利:所有権
建ぺい率:60%
容積率:160%
価格:4500万円
形状:ほぼ正方形
接道:北側2.3m但し書き道路、間口:10m
賃貸併用住宅プラン:木造2階建ての長屋タイプ
[1階の間取り]ワンルーム20平米+ロフト10平米付き×2戸
[2階の間取り]1LDK40平米・ロフト20平米付き(自宅)

11件目の土地は人気のある駅から徒歩9分の土地で、さらに駅と土地との間に大型商業施設やコンビニ、スーパーが揃うかなり便利な立地です。土地の周囲は戸建てと小ぶりなアパートが建ち並び、閑静な住宅街といった雰囲気です。

これだけ便利な立地で借地権ではなく所有権で、しかもほぼ正方形のキレイな土地ですので普通ならば6000万円ぐらいはする土地なのですが、4500万円でもずっと売れずに1年以上放置されていました。ただ見つけた当時は売れ残っていた土地だとは知らずに販売会社に問合せをして、土地の詳細資料を取り寄せました。

土地の注意事項を見ると「43条1項ただし書き道路」と書かれています。土地の現場を見に行くとキレイに舗装された道路に接しており、道路の向かいには新築して間もない戸建てが2軒建っていたので再建築自体も問題はなさそうです。そこでハウスメーカーの人に賃貸併用住宅のプランを建ててもらう過程で建築できる建物について調べてもらう事になりました。

数日後にハウスメーカーの方に調査してもらった結果は残念なものでした。と同時に土地が安い理由がよく分かりました。この土地が設定している道は道路に見えても建築基準法上の道路ではなかったのです。道路ではなくて通路(但し書き道路)だったのですが、さらにこの但し書き道路の幅が2.3mというのも問題でした。

大前提として現状で2.7m以上の幅員がないと但し書き道路での建築はできません。この土地は一部において但し書き道路と接する部分の幅員が2.7mを切っていて2.3mでした。よって本来は再建築不可となるような土地なのです。しかし、個別に厳しい条件を付加することにより建築が可能になります。

役所の都市整備部の人に確認したところ、以下のような条件でないとダメだという事がわかりました。

  • 自宅用の住宅で一戸建てのみOK
  • アパート、賃貸併用住宅、2世帯住宅はNG
  • 2階建てのみOK。3階建て、地下室はNG
  • 最高さ8m、軒高7m以下。屋根裏収納(ロフト)は作れない


建物の間取りを考え始めるところだったのですが、賃貸併用住宅がNGだと判明してすぐに見送りとなりました。交渉の余地も一切ありません。安い土地にはちゃんとした理由があるという学びとなった土地でした。

賃貸併用住宅の土地候補12件目


住所:東京都世田谷区
立地:東急人気路線 急行停車駅 徒歩5分
面積:80平米
用途:第一種低層住居専用地域
権利:借地権
建ぺい率:60%
容積率:150%
価格:4200万円
形状:ほぼ正方形
接道:南側4m私道、間口:2m
賃貸併用住宅プラン:木造2階建ての長屋タイプ
[1階の間取り]ワンルーム21平米+ロフト10平米付き×2戸
[2階の間取り]1LDK44平米・ロフト20平米付き(自宅)

もしくは中古住宅のリフォーム・リノベーションで木造2階建て共同住宅タイプ
[1階の間取り]1LDK38平米(自宅)
[2階の間取り]3DKシェアハウス38平米・個室3部屋とダイニング

12件目の土地は借地権です。築40年の中古住宅が建っており、リフォームをして中古住宅を活かすか、建て替えをして新築の住宅を建てるか、2つの選択肢がある土地です。立地はかなり良く、ブランド駅から徒歩5分で、商店街から住宅街のほうに入っていくので静かな住環境です。

この土地は位置指定道路のつき当たりにある土地で、道路と接している間口の広さは2mしかありません。しばらく売れ残っている土地だったのですが、借地権という理由以外にも道路からの出入り口が狭いので駐車場が作れないという理由もありそうです。賃貸併用住宅の場合には玄関さえ確保できれば問題ないので、間口の狭さは関係ありません。(自宅用に駐車場が欲しい場合は別途検討が必要ですが)

賃貸併用住宅を新築する場合、ロフト付きの広いワンルームが2戸できますので家賃は1戸当たり11万円で月間22万円の家賃収入です。建物が3200万円として9割の6700万円を住宅ローン利用すると月間のローン返済額は19万円なので、毎月3万円が手元に残ることになります。ただし地主さんへの地代支払いが3万円、あと賃貸住宅の運用費などの出費がありますので、毎月1~2万円の出費といったところです。

一方で中古住宅のフルリフォームをする場合、小さなダイニングのある3つの個室がついたシェアハウスが出来ます。5.5万円×3部屋=16.5万円が月間の家賃収入です。リフォーム費用1000万円として土地合せて5200万円全額を住宅ローンとして借り入れると、毎月14.5万円のローン返済なので毎月手元に残るのは2万円です。こちらも地代3万円や運用費が必要ですので毎月2~3万円の出費となります。

毎月数万円でブランド駅5分に住めるなら良いじゃないか、と思ってしまうのですが、借地権の場合は2つ大きな問題がありました。1つは住宅ローンを貸してくれる銀行・金融機関がほとんどないことです。まだ借地権に作られた建売住宅ならば借りる手段はあるのですが、自分で建物を新築をする場合は借地権を現金で購入してから、建物費用を住宅ローンで借りる必要があります。土地代の4200万円など持っていないので、そもそも買うことができません。ごく一部の金融機関は融資をしてくれますが、金利は非常に高いです。

さらに借地権の場合は「譲渡承諾料」「建て替え承諾料」など、借地権の売買や建物の新築をするたびに地主さんへの支払いが発生します。譲渡承諾料は借地価格の10%だったり、建て替え承諾料は木造の場合10%・鉄筋コンクリートの場合20%など、数百万円の出費が発生するのです。

いくら借地権が安いとは言っても、住宅ローンが使えなかったり、他で多額の出費があっては意味がありません。借地権の土地の難しさを体験できたことで、自分の賃貸併用住宅は所有権に絞って土地を探す必要があると教訓を得られた物件となりました。

まだまだ土地探しと中古の賃貸併用住宅探しは続きます。