賃貸併用住宅は自宅と賃貸住宅が同じ建物として建てられた住宅ですが、賃貸併用という建物の構成や間取りには様々な注意点や考えておくべき事柄があります。今回は賃貸併用という特殊な建物で知っておきたい特徴を見ていこうと思います。
賃貸併用部分の位置で変わる生活音の問題
音の問題はほとんどの場合、上下階での音の伝わりが問題になります。自宅の場合は家族ですので気軽に注意できるため大きな問題にはならないのですが、自宅と賃貸住宅の場合は他人同士ですので音が気になっても指摘しにくく、不満が溜まってしまうことになりやすいです。
上下階での音の伝わりと書きましたが、ほとんどは上から下への生活音や足音が問題となります。物は上から下に落ちますし、人間が歩く音は床から下の階に伝わるからです。この前提を踏まえて賃貸併用のパターン毎に、どんな音の問題が起こりやすいのかチェックしていきましょう。
自宅が2階か3階で下に賃貸住宅
2階建てならば1階に賃貸住宅、3階建てならば1階と2階に賃貸住宅がある場合になると思います。この場合は自宅に住む自分たちが騒音の発生源になっていますので、賃貸住宅に住む入居者に迷惑が掛からないように気を遣うことになります。
逆に賃貸住宅に住んでいる入居者は上に大家さんが住んでいる事を知っていますので、文句も言いづらく不満がたまった結果、黙って出て行ってしまうという事になりかねません。家賃収入がなくなってしまう事は賃貸併用住宅にとって一番の問題です。
できるだけ賃貸併用住宅の設計段階で音の問題をなくすように間取りを工夫するようにしたり、子供が騒音を起こしてしまう場合は、跳ねたりする遊びは庭でさせる習慣を付けるなど、音の問題を意識した上でちょっとした工夫をするようにしましょう。
自宅が1階で上に賃貸住宅
この場合は自宅部分に住む大家側が迷惑を掛けられる側になります。生活音で入居者に迷惑をかけることはほとんど無いので気軽に暮らすことができますが、自分たちが音に敏感な場合は多少のストレスになる可能性があります。
また賃貸住宅は自宅よりも小さな間取りで部屋を複数確保することが普通ですので、建物に負担の大きい水回りが建物の上部に配置されてしまう事になります。つまり賃貸併用住宅への負荷が大きくなり、重量のバランスも良くないので設計段階でしっかりと構造計算をしておき、頑丈な建物を建てるように気を付ける必要があります。
頑丈な建物にすることで騒音の問題も軽減されますので、建築費が多少高くなったとしても、メリットがどれだけあるかを確認して考えるようにすることをおススメします。
左右で自宅と賃貸住宅が別れている
2つの戸建てが隣通しでくっ付いたような賃貸併用の形状です。この形状はほぼ2階建てでしか見ることができません。3階建てでは無駄な階段が増えてしまいますのでこの形状は採用されることがないためです。
自宅部分だけで上下の音の問題が完結しているので、生活音で入居者に迷惑をかけることもないですし、逆に賃貸住宅からの騒音で不満を抱えることにもなりません。左右で接している場合はその間を収納スペースなどにする事で、ほとんど音が伝わることはなくなります。
ただし賃貸併用というのは同じ建物ですので距離自体は当然近いため、スピーカーで大音量の音楽を流せば窓の外から当然隣に伝わってしまいますし、料理をして煙が大量に出る時などは風があると簡単に隣に匂いが流れていってしまいます。
賃貸併用というのは集合住宅と同じですので、同じ建物に住む入居者への配慮を忘れないように生活すれば特に問題となりません。マンションやアパートに住んでいる時と同じ気持ちで入居者への配慮を欠かさないようにしましょう。
大家と入居者の距離感
通常は大家と入居者は別の場所で暮らしていますので、距離感などは気にする必要がありません。賃貸併用の場合はここが大きく違い、大家と入居者が頻繁に顔を合わせる事になります。
普段は挨拶をする程度ですが、この距離の近さにより問題が起こる可能性があるのです。
入居者が困る場合
特に仲が良いわけでもないのに、大家というだけで余計な世話を焼いたり、必要以上に詮索したり、人間関係にまで口出ししてくる場合、入居者は賃貸併用になっている賃貸住宅を選んだことに後悔することになってしまいます。
日々のあいさつ等で徐々に親密になってきている場合は良いのですが、ほとんどの入居者は大家であるあなたや家族とコミュニケーションを取ることを面倒だと感じています。特に若い入居者は年齢の近い人以外とのコミュニケーションに慣れていない場合が多いので、無理に仲良くなろうとせず、ゆっくりと時間を掛けて距離感を調整していきましょう。
大家が困ってしまう場合
入居者が大家に迷惑をかける一番の原因は家賃滞納です。賃貸併用住宅では大家が同じ建物に住んでいるために心理的に家賃滞納はしづらくなっていますが、生活リズムが違うなど大家とほとんど接する事が無い場合、金銭的に苦しくなってしまうと大家への相談もせずに滞納を続けてしまう入居者は多いです。
また若い入居者が友人を部屋に招いて大きな声で騒いだり、音楽を大音量で掛けたりして大家だけではなく他の入居者や周辺の住宅にまで迷惑を掛けてしまうこともあります。こうした迷惑行為を行う入居者は毅然とした態度で接して注意を続けてください。
そもそも入居をする際に迷惑行為を行いそうな人間というのは多くの場合見抜くことができます。賃貸併用住宅は迷惑入居者の影響が自宅にまで及びますので、入居者審査を厳しい基準で不動産会社に実施してもらったり、必ず自分が対面での審査を行うなど、入居段階で選別することで事前に迷惑行為を防止することが大切です。
自分で建物の管理が容易にできる
賃貸併用という建物で最大の利点が、建物を毎日自分が見ることで不具合にすぐ気付くことができるという点です。自分が住んでいないアパート等の場合、よほど近隣にない限り毎日見に行くのは大変ですが、自宅である賃貸併用住宅ならば必ず毎日建物を見る事ができますので、自然と修繕や補修が必要な箇所があるとすぐに気付くことができます。
建物の維持というのは、不具合や破損に気付くタイミングが早ければ早いほど、安く簡単に修繕を行うことができ、耐久性を長期間保つことができるのです。賃貸住宅に不具合があればすぐ見に行けますし、自宅なので悪天候なども把握していますので、洪水や暴風の危険がある場合は事前に対策を講じることもできます。
賃貸住宅を所有する大家でよく起こる問題として、遠方に所有しているアパートのごく簡単な修繕でも高額な請求をされたり、何の管理も修繕もしていないのに管理費を騙し取られ続けるといったことがあります。これは自分の目で実際に賃貸住宅を確認できない事が原因ですから、賃貸併用住宅の場合はこういった業者に騙される原因がないのです。
初めての不動産投資や、リスクの低い不動産投資をしたい人に賃貸併用住宅がピッタリだとされるのは、取得するまでの難易度ではなく、管理運営が容易だという優位性が大きな理由となっているからです。
住宅ローンのせいで気軽に引っ越しできない
賃貸併用住宅は低金利かつ長期間の借り入れができる住宅ローンが利用できる事が大きな利点です。他の不動産投資の方法ではよほど賃貸経営の実績がない限り、住宅ローンのような好条件で融資を受けることはできませんので、住宅ローンの利用を前提として賃貸併用住宅の取得を考えることになります。
すると住宅ローンの規定として、自宅が半分以上を占める建物であることを条件に低金利での借り入れが出来ている訳ですので、住宅ローンが残っているうちは勝手に引越して自宅部分を賃貸住宅として貸し出すことはできません。
もし銀行に内緒で自宅を賃貸したとしても、銀行からの郵送物により転居がすぐにばれてしまいます。そうなると銀行は住宅ローンの目的外利用を行ったことを理由に、住宅ローンの残債の一括返済を迫ってきます。銀行との信頼関係を壊してしまうと大きなしっぺ返しを喰らうことになるのです。
とは言え銀行もお金を貸して金利をもらう事が最大の収入源ですので、賃貸併用住宅から引っ越したくなったり、仕事の都合や親の介護など、仕方がない理由で引越しをする場合は早めに銀行に相談をしに行きましょう。
そうすれば理由や背景を考慮してもらってそのまま自宅を賃貸することについて許可してもらったり、住宅ローンを多少金利が高くなりますがアパートローンに切り替えてもらえたりする事で、堂々と自宅を賃貸住宅として貸し出し、家賃収入を得ることもできます。
気軽に引越しはできませんが、キチンとした理由を銀行に話せば引越しする事はできます。銀行に相談もせずに勝手に引越しだけはしないよう、賃貸併用住宅を取得した後は気を付けてください。