実際に検討した賃貸併用住宅の土地と間取り その7

一般的な一戸建て住宅を建てる場合に人気の南側道路の土地ですが、賃貸併用住宅の場合には逆に北側道路の土地が有利です。なぜなら賃貸併用住宅は自宅と賃貸住宅がくっついているため大きな建物を建てる必要があるため、建物の高さを規制する北側斜線制限の影響が少ないほうが良いからです。

今回はそんな南側接道の土地と北側接道の土地でどんな影響があるのか、具体的な賃貸併用住宅の建築プランを見ながら案内していこうと思います。

賃貸併用住宅の土地候補15件目


住所:東京都世田谷区
立地:東急沿線 普通停車駅 徒歩2分
面積:74平米
用途:第一種低層住居専用地域
権利:所有権
建ぺい率:60%
容積率:200%
価格:4500万円
形状:南北に長い長方形
接道:南側5m公道、間口:6m
賃貸併用住宅プラン:木造3階建ての長屋タイプ
[1階の間取り]1LDK40平米(自宅)
[2階の間取り]シェアハウスLDK40平米
[3階の間取り]シェアハウス個室4戸の合計34平米

15件目の土地は広い南側道路に接した形の良い土地です。最寄り駅はあまり乗降客数の多くない小さな駅ですが、15分ほど歩くと人気駅まで行けて、スーパーとドラッグストア、コンビニ2店舗が駅の周辺にあります。大型の家電量販店も歩いて10分弱の距離です。意外と便利な穴場の立地です。

この土地は全面道路が5メートル幅と広くて見通しが良いため、夜でも明るく駅から歩いてくる間で暗い場所はありません。賃貸住宅を作れば女性にも安心して入居してもらえそうです。

建てられる建物のワンフロアの広さは40平米なのでまずまずといったところ。形は南北に長いので斜線制限により削られる容積は少ないのですが、3階部分は最大でも34平米までしか床面積を確保できません。

すると賃貸住宅部分をシェアハウスにしても個室が4つしか取れず、家賃収入は5.5万円×4部屋=22万円で土地の価格の割には想定収入が少ないです。しかも自宅部分はロフトもない1LDK40平米なので、家族4人で住むには狭いです。

賃貸住宅部分を20平米1K×3戸にして、自宅部分を2階20平米+3階34平米のプランも軽く考えましたが、競争力のない賃貸と狭い自宅しかできそうになかったので、早々にこの土地は見送ることにしました。

南側接道、前面道路5mで広く、幹線道路が近くにあるので、駐車場付きの一戸建てを建てるのが向いている土地でした。賃貸併用住宅は希望の建物のボリュームが確保できるかが重要だと理解した実体験となりました。

賃貸併用住宅の土地候補16件目


住所:東京都世田谷区
立地:東急人気路線 急行停車駅 徒歩2分
面積:62平米
用途:第一種住居地域
権利:所有権
建ぺい率:60%
容積率:160%
価格:5700万円
形状:南北に長い長方形
接道:北側4m公道、間口:5.7m
賃貸併用住宅プラン:木造3階建ての長屋タイプ
[1階の間取り]1LDK37平米(自宅)
[2階の間取り]シェアハウスLDK30平米
[3階の間取り]シェアハウス個室4戸の合計30平米

16件目の土地は北側の幅員が広い道路に接している小さな土地です。人気の駅から徒歩2分で、しかも幹線道路から一本裏に入るため騒音や排気ガスの影響がほとんどない便利な立地です。土地の情報は不動産会社から提案でもらったものです。


小さな建物しか建てられませんが、立地の良さのおかげで賃貸1部屋当たりの高い家賃収入が見込めます。シェアハウスにすることで個室が4部屋確保でき、1部屋家賃が6万円×4部屋=24万円の月間の想定家賃収入です。

土地候補15件目で検討したシェアハウスよりも小さな床面積で高い家賃収入が見込めるのは、立地というのがそれだけ家賃収入に大きな影響を与えるという事です。つまり駅から離れた閑静な住宅街のような場所では、土地価格が高い上に家賃収入が少ないので、賃貸併用住宅には向いていません。小さくても駅近で便利な立地の土地が良いという事です。

ただしこの土地の場合、賃貸住宅の部屋当たり単価は高くても、確保できる部屋数が少ないですし、何よりこの建物の大きさのものしか建てられないのに5700万円は価格が高過ぎです。収益性の観点から見ると、賃貸経営として見合わない土地と言えるでしょう。

建物の総床面積が100平米弱ですので、将来的に人気駅の駅近一戸建てとして売りに出すことも売却プランとして考えられますが、37平米の小さな自宅部分に家族で住むことができなかったことと、総額9000万円という高額な投資の割に家賃収入が少ないため見送ることにしました。

それでも立地の良さが賃貸併用住宅でいかに重要な要素かを身を持って体験できた良い経験となりました。

次回で賃貸併用住宅を検討してきた具体例シリーズは完結です。お楽しみに。